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「イタッ!!」
「我慢して下さい。」
ドラッグストアで買った消毒薬とコットンで、工藤が香織の口を拭いていた。
「結構、派手に叩かれたんですね?病院、行った方が良いですよ。」
「そうなの?」
「これ…縫わなきゃいけないかも?」
「そんなに!?」
口を開けて見ていた工藤がスマホを取り出した。
どこかへ電話している様だ。
「お久しぶりです。工藤です。1人…ちょっと診てもらいたい人が居まして…はい…。」
《…どこに電話してんの?》
「あ、じゃあ今から直ぐに行きます。宜しくお願いします。」
そう言って電話切るなり、車に乗り込んだ。
「…ちょ、ちょっと…どこ行くの?」
「病院です。」
「…えっ!?今から!?」
「ええ。今日って、熱が出て病院に行ってるんですよね?」
工藤が嫌な笑い方をした。
「…そうだけど。」
「じゃあ、本当に行くから良いでしょ?」
何も言えない香織。
「ところで…今の電話…誰と?」
「大学病院の口腔外科です。」
「…大学…病院…口腔外科!?」
「あんまり喋ると傷口が広がるから、喋るなと言ってました。だから、黙ってください。」
しばらく車を走らせると本当に大学病院の近くを走っていた。
工藤はスマホを取り出し、もう着きますと電話している。
香織は黙っているしか、出来ない。
大学病院の駐車場に着き、中に入ると白衣を着た人と看護師らしき女性が既に、待機していた。
個室に案内され、写真を撮られた。
《…口腔外科で…どうして写真撮られるわけ?》
香織は案内されるがままに診察室に入れられた。
「あぁ、これは…縫わなきゃダメですね。」
医師がそう言うと工藤は
「では、宜しくお願いします。」
と言って診察室を出た。
「じゃあ、今から麻酔しますので。局所麻酔ですから。」
香織は頷いた。
数十分ぐらいだっただろうか…縫い終わり診察室から香織と医師が出てきた。
「まだ、麻酔が効いてるから、喋りづらいだろうけど、もう大丈夫です。」
工藤が頭を下げて「ありがとうございます。」と伝えた。
「いやぁ…工藤君からのお願いだから、仕方ないよ。工藤君も良い判断だったね。じゃあ、お大事に。」
工藤は再度、頭を下げ礼をしていた。
「喋らなくて良いから。待っててください。」
会計を済まし、工藤が香織を助手席に乗せた。
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