Woman

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「名越さん!!例のデザインの件、どうなってる?」 課長の言葉にハッとした。別の仕事で頭が一杯になっていた香織。 「…すみません。後で資料室から何か探してみます。」 そう言うと工藤が寄って来た。 「名越さん…探すの手伝いましょうか?」 意外な工藤の言葉に「あ…でも、工藤さんの仕事…。」 「自分の仕事はある程度、片付きましたから…。」 香織は迷っていた。今の仕事も途中だった。 「あ、じゃあ…この仕事、キリの良いところで終わらせるから。待ってて。」 工藤はそれを聞き、別の仕事をし始めた。 それを見て香織は、キリの良いところまで終わらせる事にした。 「よしっ!!保存っと!!」 そう言って工藤を見た。工藤も香織を見ていた。 「じゃあ、資料室に行きましょうか?」 工藤がそう言うと香織は工藤の手元を見た。 「…さっき、し始めた仕事は?」 「終わりました。」 「…あ、じゃあ、行こうか?」 《え!?数十分で終わらせるの?》 不思議な感覚を覚えながら工藤を従え、資料室に向かって行った。 「ここが、資料室。ちょっとカビ臭いけど…我慢してね。」 そう言って資料室の灯りをつけた。 大量の資料や段ボール…それらの中から探すのは容易では無かった。 「新しいのは、この辺だったはず…。」 そう言って自分の背丈よりも高い棚の資料を引き出していた時、周りの資料も一緒に落ちて来た。 咄嗟に両手で頭を庇い、目を閉じる香織。 《あれ?》 頭に落ちてくるはずの資料の感触が無かった。庇った両手の隙間から閉じていた目を開いた。 工藤が両手で落ちてくるはずの資料を受け止めていた。 「大丈夫ですか?名越さん。」 工藤の顔が香織の目の前にあった。 「…うん。大丈夫。ありがとう。」 そう言うと庇っていた両手を下ろした香織。資料を元に戻す工藤。 「高い所の資料を取る時は、言ってください。」 「あ、うん。そうする。」 工藤の顔の近さに一瞬、ドキッとした。 「どんな…デザインなんですか?」 工藤が香織に聞いた。 「えっ…あぁ、えーっと。」 そう言うと工藤にデザインのイメージやレイアウトなどを話していた。 「…それなら。資料室で探さなくても…。」 工藤の言葉に何も言えなかった。 「…資料…無くても作れるの?」 香織の言葉を聞いた工藤がオフィスに戻る事を伝えた。 工藤は目の前のパソコンでデザインを始めた。 「…工藤君。デザイン…出来るの?」 「出来るというか、好きでやってるだけなんです。」 隣で見ていた香織のイメージやレイアウトを元に、数十分で作り上げた。 「こんな感じ…ですか?」 言葉が無かった。 中腰で見ていた香織に座っていた椅子を譲った。 「あぁ、ゴメン…。」 そこへまた課長がやって来た。 工藤の椅子に座る香織を不思議そうに見ていた。 「名越さん。デザインの件だが…。」 工藤が課長の言葉を遮り「名越さんが作りました。」と課長に言った。 「いや、私は…何も…。」 「なんだ?出来てるじゃないか?じゃあ、それを私のパソコンに送ってくれ。頼んだぞ。」 香織は工藤を見ていた。 「とりあえず、名越さんの方に送りますから、課長に。」 工藤は席を譲ってくれというジェスチャーをした。 「あ、ゴメン…。」慌てて席を譲ると自分の席に戻った。 間も無く工藤のパソコンから転送されたデザイン。 それを課長のメールアドレスに転送した。
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