Woman

6/22
前へ
/59ページ
次へ
「あれ?名越さんもタバコ…吸うんですね?」 喫煙所でタバコを吸っていた香織に工藤もタバコを吸い始めた。 「私も…電子タバコ。匂いがあまり、しないから。」 「そうですよね。これ…電子タバコに慣れると、紙タバコ…臭くて、口の中まで気持ち悪くなりますよね?」 そんな風に話す工藤を初めて見た。 普段は黙々と仕事をして、自分から何かを話し掛ける人だとは思わなかった。 「でも電子タバコとは言え…タバコを吸う女って…嫌い?」 香織が工藤に聞いた。 「良いんじゃないですか?」 「そうなの?ほら、女がタバコなんて!!って言う人も多いから。」 「気分転換の方法なんて、人様々でしょ?女性だから…とか、女なのに…とか、今時、時代錯誤も甚だしいですよ(笑)他の喫煙所にも、同じ様に吸ってる女性が沢山居ますよ。」 そう言って笑う工藤。初めて見た工藤の笑った顔。 《この人…幾つの顔…持ってるの?》 そんな事を思いながら、電子タバコを吸っていた香織の目の前に、工藤が缶コーヒーを見せた。 「なに?」 「この前のお返しです。」 「いや、良いよ。」 「缶コーヒー…嫌いでしたか?」 「…いや、飲むけど。」 「じゃあ、これ。」 更に勧める工藤の缶コーヒーを受け取ろうとした時、プルタブを起こして開けてくれた。 「…。」 工藤を見上げた。同じ様にタバコと缶コーヒーを交互に吸い、飲んでいる横顔。 「じゃあ…遠慮なく…。」 香織はその缶コーヒーを飲んだ。 「時々…名越さんは、スマホを見て頭を抱えてますね?」 見られていた…。 「あー。子どもの持ち物…たまに、入れ忘れたりするんだよね…。朝、バタバタしてるから。ダメだなぁ…って思ったりするの。」 ふと、自分の日常を工藤に話している自分にハッとした。何故、家庭の事を工藤に話しているのか?分からなかった。 「なんでも完璧にやろうと思うからですよ。」 「…えっ?」 「誰だって、忘れ物の一つや二つ…あるじゃないですか?」 「…まぁ…そうだけど。」 「たまには、責める自分を許してあげないと…苦しみが膨らむだけですよね?」 工藤の言葉にまた見上げた。 「名越さん。素敵なんですから…そんな顔は似合いませんよ(笑)」 「…私は…素敵なんかじゃ…。」 その言葉に苦笑いした。 「もっと笑った方が…名越さんらしくて、良いんじゃないかな?」 「もう、何言ってるのよ(笑)」 「そう!それ!」 「えっ?」 「笑うと可愛いんですね?名越さん。」 その言葉にまた、ドキッっとした。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加