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何故か…分からなかったが…工藤が喫煙所に向かうタイミングで香織も喫煙所に向かう。
そんな自分の行動を不思議に感じていた。
「度々、こうやってタバコを吸う男なんて、何イライラしてるんだ?って思われますよね?(笑)」
また話しかけられた。
「別に良いんじゃない?基本的に…私は男の人のタバコやお酒は肯定してるから。」
「じゃあ、旦那さんが吸ってても何とも思わないんですね?」
「あー。あっちは紙タバコだからね…。ベランダで吸わせてるの(笑)私は換気扇の下。そのくせ、私にはタバコなんか、やめろ…なんて言う。」
「自分は良くて、妻はダメ…って事ですか?」
「それだけじゃない…私が仕事終わって買い物して…家に帰ったら食べたままの皿や空き缶…洗濯機の前には大量の洗濯物。何から手をつけて良いんだか…分かんなくなっちゃう。」
毎日の出来事が頭の中で再生されている。
「私の時間なんて、全くない。楽しみたい事だってある。前はね、ウォーキングとかしてた。でも、出来なくなった。」
「どうして、出来なくなったんですか?」
「どうして…子どもが大きくなるにつれ、母として…妻として…やる事が多くなった。やらなきゃって思ってやれてた。気がついたら…私の時間まで奪われてた。」
そこまで話すと我に返った。
「あ、何話してるんだろね。ゴメン…忘れて。」
「忘れて…?そこまで話しといて、忘れてって…無理に決まってるでしょ?」
「ほら、家庭での愚痴…そんなとこだからさ。どこの家庭でもあるでしょ?そんな感じよ。」
「それを今、吐く事で少しでも気が楽になるんだったら…良いと思いますよ。」
「えっ?私の家庭の愚痴なんか聞いて楽しい?」
香織は少し嫌味っぽく聞いた。
「楽しそうに聞いてましたか?僕。」
「…ゴメン。そんなつもりじゃ。」
「僕は1人だから、そんな愚痴…聞いてくれる人も居ない。」
「…彼女は?ほら、彼女に聞いて貰ったり…。」
「居る様に見えますか?(笑)」
「えっ…居ないの?」
「居ませんよ。(笑)じゃあ、先にオフィスに戻りますね。」
慌てて香織も喫煙所を後にした。
《この人は…1人で、どんな生活をしてるんだろ?》
また一つ…別の顔を見た。
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