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ある日。課長が香織の元に険しい表情でやって来た。
「名越さん!!なんだね?この数字!!」
香織は突然の事で訳が分からなかった。それは課長が香織のデスクに叩きつける様に置いた書類を見て、自分が手掛けた物だと分かった。
その書類に不備…どこが間違えているのか?一つ一つの項目をチェックしていた時。
「あ…。」
香織がようやく、その間違いに気づいた。
「大体、この程度の計算で間違いが起きるなんて、有り得ないだろ!?新人ならともかく、君の様な…。」
「大変!!申し訳ありませんでした!!」
「えっ…。」
工藤が席を立ち頭を下げていた。
「あ、いや…工藤君じゃなくて…名越さんに…、」
「その書類の叩き上げ、作ったのは自分なんです。すみません。よく確認しないまま、名越さんに手渡してしまいました。直ぐに作り直します!!」
「えっ…ちょっと…。」
香織が戸惑っていた。
「…く、工藤君…そうか…まぁ、時々、失敗もあるからね。まぁ、今後は出来るだけミスの無い様にな…。」
「はい。以後、気をつけます。」
課長が去って行った後で、香織の前に置かれた書類を手に取り、修正作業を行う工藤。
「工藤君も…ミスするんだ?」
「まぁ、人間だから、たまには…ミスもするよな…。」
普段から仕事は早く、正確な工藤がミスをした。
周りの反応は意外とも受け取れた。
が…納得出来ないで居たのは香織の方だった。
自分のミスを被り、頭を下げたから?そうじゃない。
言い様の無い怒りにも似た感情が込み上げてきた。
そんな事を思っていた時だった。
「名越さん。ダブルチェック…お願いします。」
早々と仕事を終わらせた工藤に周りも驚いた。
「…はい。分かりました…。」
工藤から書類を受け取り、ダブルチェックをして、間違い無い事を確認し、課長に手渡した。
「…えっ!!もう出来たのかね!?」
「…はい。念の為、ダブルチェックしましたが…。」
その書類に目を通すと。すんなり、決済の印鑑が押された。
それを確認して、デスクに戻ろうとした香織に喫煙所に向かう工藤が見えた。
香織も急いで喫煙所に向かった。
工藤は自販機で飲み物を買って喫煙所に向かっていた。
納得できなかった…。
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