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第三章 小さな国 三
アルパスという国は王国で、首都は山の高い場所にある。その為、運搬費用が嵩み、首都では食料の価格がとても高い。それでも生活出来ているのは、鉱山からの収入が良い事と、他に住む場所が無いせいだ。
首都の空都は、それなりの面積を誇っているが、他の土地は斜面ばかりだ。
「地下水路で港付近まで行ける」
「はい」
この地下水路は、本当に凄い。空都から港まで、かつては水を供給していたのだろう。そして、採掘技術の高さも伺える。
地下水路を歩いていると、時々、灯りのようなものがあり、確認すると工房になっていた。
地上での土地が少ないので、地下で作業している人々がいたようだ。
「夏目さん、トラジャは海賊ですが、船で戦っているのではありません」
「知っている」
トラジャの海賊は、筏のような小舟で近づき、相手の船に乗り込んで荷物を奪う。だから、近海にのみ出没し、大海にはいない。
リプロスには軍艦もあるが、この筏を狙う事が難しい。そして、トラジャも長距離は移動出来ないので、リプロスに行ってまでは海賊行為を行っていない。
つまりは、狙われているのは、アルパスの港だけなのだ。もしくは、アルパスの港に入る船だけだ。
「陸路も開拓したいが、地図上は近いのに、あるのは崖だ」
だが、崖をどうにかすれば、アルパスは大陸の中央にあるので、交易が出来る。
「ロープウェイのような移動手段を作ってもいい。だが、まず姫様を探す」
「そうしてください」
そして、まずはトラジャだ。
アルパスの港に到着すると、既に夜になっていたが、街は夜に浮かび上がるかのように光っていた。
そして大通りを歩いてみると、荷物を運ぶ馬車で一杯になっていた。
「馬車で空都まで運ぶのか……」
「馬列車と呼ばれています」
そこには、アルパスなりの技術があり、馬の他にも石炭が使用され、貨物列車のようなものを作成していた。
「うむ、いいね」
「感心していないでください。ここ、馬車が多くて危ないです」
大通りには、行き交う馬車がかなりの速度で移動しているので、横断不可能な場所になっていた。それは、夜でも同じで、通りの向こうに行きたい場合は、港まで生き、橋を渡るしかないという。
「道原、あの船。多分、海賊に襲われる。リプロスに行きたいとか理由をつけて、俺達が、乗れるようにして欲しい」
「はい。交渉します。でも、何故、襲われると分かるのですか?」
それは、船荷が酒のせいなのか、乗組員に戦闘員がいない。宝石や装飾品、鉄製品を積み込んだ船は、比較的大きく戦闘員も多数乗り込んでいた。
そして、本人達も襲われ易いと自覚しているので、夜に出発しようとしている。
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