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「あの船は、今から出発しようとしている」
「夜はより襲われやすいでしょう?」
夜の方が犯罪は多い。それは、昔から変わっていないのかもしれない。しかしながら、ここの海は魔物だ。波は激しく舵が難しい。そして夜になると、周囲が見えない分、それが顕著に出てくる。
それでも、そういう夜に長けた者が存在する。
多分、あの船は小型になっている分、かなりの高速で夜の海を移動出来る。
「彼等は、夜の海を熟知している」
「でも、海賊に襲われるのですか?」
だから、海賊にも分かり易いのだ。
ゆっくりと進む船は武装している。
「海賊も長けているという事だ」
トラジャは、アルパスの港を過ぎる事が出来ない。その先にあるのが、砂漠であり、更にそこはリプロスの領土だからだ。
しかも、砂漠に逃げ込んでも、アルパスという山脈に阻まれ帰れなくなる。
「この港は、狩場と同時に難所だ。勝負は一瞬で付く」
「襲われる船に乗るというのは、勇気が必要です……」
道原は、ぶつぶつ言いながらも、交渉に行ってくれた。
「俺は、その辺をブラブラしている」
しかし、港というのは面白い。あれこれ武器も揃っていたので、つい買い足してしまった。
「あの子、髪まで真っ白……しかも、妖精みたいに綺麗だ……」
「アルパスの宝珠と呼ばれる、シュリヤ様みたいだ……」
「でも、男の子みたいだぞ」
ここでも、俺とシュリヤの区別が出来ているようだ。
「でも、綺麗で凛々しい……無所属なら、神殿も黙っていないぞ……」
「横に漆黒の執事みたいなのがいたから、余計に目立つ。貴族かもしれない……」
「うわああ、こっちを見た。本当に妖精の女王みたいだ」
どうも、道原の恰好が目立っていたようだ。後で着替えを調達しておこう。それと、女王ではなく王と訂正して欲しいものだ。
俺は港を一周すると、目ぼしい物を買い込んだ。そして、元の位置で待っていると、道原が戻ってきた。
「道原、着替えを購入」
「そうします」
それと、俺も目立たないように黒のフードを購入しておく。
「夏目さん、鎧もありますよ」
「重いから要らない」
しかし、ここの住人は、真っ白な髪に驚き指摘しても、真っ白な肌を見て驚く事が無かった。
「この大陸には、白い肌がいるのか?」
「少数ですが、リプロスの神官一族と、ホウノウストの山間民族にいるようです」
ホウノウストの山間民族も、神の民と呼ばれているので、神官と通じるものがあるらしい。そして、海に囲まれたこの大陸では、白い肌というのは異質で、崇められる対象になっていた。
「色として、白は始めの色で、何色にも成れた。そして、黒は終わりの色で、何色にも染まらない。そういう謂れがあるので、神官は始めの白、王族貴族は終わりの黒の強さがあるとされます」
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