第三章 小さな国 三

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 ここで、少し分かってきたのだが、シュリヤも俺と同じような色だったのならば、他国の神殿や王族も所有したい姿だったという事だ。 「夏目さん、ワイヤーも製造していたのですか……これ、本当に過去ですか????」 「過去は変えられない筈だよな……そこは、不思議だ」  ここが、三毛が見ているだけの過去ならば、俺達はこんなに自由に行動できない。しかも、こんなにリアルに体験しているのに、ここは多分共有している夢の中だ。 「ま、気にしない。道原、交渉はどうだった?」 「金を支払うと言ったら、快く了承してくださいました」  そこで、船を確認してみると、乗組員がしきりに俺の方を見ていた。多分、フードを被る前の姿を見てしまったのだろう。  そして俺達が気付いたと分かると、一人の乗組員が走ってきた。 「この方を運ぶのですか?あの確認ですが、神官とかに親戚はいますか?」 「いません」  やはり、俺の姿が気になってしまうらしい。そこで、道原が詳しく聞いてみると、神官の一族というのは、船に祝福を与えるが、決して海には出ないという。 「泳げないのか?」 「そうではなく、海は黒とされているからです」  海は黒くない。  しかし、海の怖さが夜にあるので、そうなっているのだろう。 「嵐だって怖い」 「嵐も怖いです。だから、神官に祝福を貰っています」  それと、別の意味で神官を海に出さない理由があり、それは逃亡の防止らしい。 「神官は、国の宝なのです」 「ただの人だろう」  だが、ただの人とも呼べない面もあり、それぞれが特殊な能力を持っているという。 「神官は、暦を作り、人々に種まきの時期や、祈りの日を教えます」 「天文学か……それは、重要だな」  祈りの日は兎も角、種まきなどは重要だ。 「他に、病気を治し、怪我を治療します」 「医学もあるのか」  そういう技術や知識があるので、神官は守られている。 「俺は、神官ではない。髪は染めてもいい」 「夏目さん、それでも目立ちます」  しかし、白を染めるのは、儀式の時のみと決まっているのだそうだ。 「布はどうしているのだ?カラフルだけど」 「白から染めなければ問題ありません。それに、白の布は貴族しか持っていませんよ」  この国にも、特殊なルールがあるようだ。  そして、金を支払おうとすると、持っていたナイフと引き換えに乗船を許してくれた。 「ナイフが欲しいのか……」 「この、カッコイイ模様が気に入りました!」
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