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第四章 海と空と酒
俺と道原は、打ち上げていた花火を止めると、素直に海賊に捕まった。そして、ロープで縛られると、甲板に連れ出された。
「このガキ、いや白の者。恐ろしく身軽で、数人が蹴り飛ばされて負傷しました」
「どいつだ」
この船に乗り込んできた集団は、一人の少年を見ていた。多分、この少年がこの集団を仕切っているのだろう。
「え????白の者????」
少年は、かなり驚き、俺のフードを外してから又唸った。
「……本物の白だ……」
少年は、細身だがしっかりとした筋肉を纏っていて、年の頃は十代後半といったあたりだ。しかし、染み出るような迫力と気迫が、群を抜いて凄い。そして、俺を見ると再び固まっていた。
「シュリヤ?」
「いや、俺は男だ。ち……」
「夏目さん!ストップ」
俺が何を言おうとしたのか悟った道原が、俺を制していた。
「そうか、男なら遠慮しなくていいな」
そして、少年は拳を握ると、俺をおもいっきり殴り飛ばした。
「う!」
「夏目さん!」
しかし、前もって拳を作ってくれたので、俺は派手に後ろに吹っ飛び、衝撃を押さえておいた。だから、見た目ほどは痛くない。しかし、唇が切れて、血が流れてしまった。
殴った衝撃が少なかった事に満足したのか、少年が俺を見て笑っていた。
「夏目さん!」
「大丈夫だ」
俺は激突した壁から起き上がると、少年を睨んだ。
「名前は夏目か。漢字という事は、本名は何だ?」
「いや、夏目が本名だ」
アルパスでは、漢字がミドルネームなので、本名を聞いてきたのだろう。
「アルパスの者ではないのか?」
「そうだ」
真珠がどこの国の出身なんぼか分からないが、多分、この肌ならば、どこの国でも異端だろう。
「……ウチの頭領が、白の者を探していたが、お前か?」
「俺は、トラジャに行った事がない。だから、違う」
俺が、殴られた以外の危害を加えられない理由は、頭領が探している白の者かもしれないと遠慮していたかららしい。
だが、俺はトラジャの事は知らない。もしかすると、真珠はトラジャと関連していたのかもしれないが、記憶が無いので分からない。
「なら、もう一発殴ってもいいな」
「遠慮する」
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