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「それは、クロスボウ。これ、トラジャの技術で制作可能か?」
「できますが……この模様は……真似できません」
模様は性能に関係ない。
そこで、甲板に図面を描いて説明していると、ミンドが大笑いしていた。
「ソウ、甲板を剥がして持ってゆくか??ハハハハハ」
「……紙に写す」
紙があるのならば、早く出して欲しかった。しかし、出てきたものは、木の板のようだった。
「他にも色々あるが、銃は知っているか?」
「火薬を使用しているのですか……そんなに、小型のものは、初めて見ました」
トラジャにも火薬はあるが、安定していないので、持ち運ぶ事が難しいらしい。その為か、俺の作った花火の技術を学びたいと言っていた。
「なあ、トラジャは、陸の部分でもアルパスと繋がっているだろう。どうして、山賊ではなく、海賊をしている?」
「船のほうが楽だからです。トラジャとアルパスの国境には、切り立った崖があり、人の移動はどうにか出来ても、荷物の移動は難しい」
火薬があるのならば、トンネルを掘ってしまうという手もある。
しかしそれは、あくまで国交があっての事だ。
「それと、トラジャには、白の者がいるのか?」
「ここまで真っ白の人間は、初めて見ました。アルパスのシュリヤが白いと聞きますが、見た事はありません」
トラジャにも神殿があり、そこには白い肌をした神官がいるらしい。そして、白い程、神に近いとされていた。
「王族は、一人に一人の神官がいます。身分が高い者ほど、神に近い神官が付く。しかしながら、ゴウバイ様には問題があって……」
「問題?」
ソウの説明によると、ゴウバイは王族の中でも地位が高いのに、付いた神官が失踪してしまったらしい。
「ゴウバイ様の神官は、失踪となっていますが、多分、誘拐されたのだと思われます。しかも、他の王族の手によって……」
「つまりは、王族しか入れないような場所で、消えてしまったという事か?」
ゴウバイの勢いに、他の王族が反発している状態らしい。
「白の者は、滅多に生まれてきません。ゴウバイ様に付いていた者も、金塊と引き換えにホウノウストから来たといわれています」
「出生不明の者か……また、厄介なヤツだ」
ゴウバイに付いていた白の者は、ソウの推測だと、ホウノウストの神殿から金塊目当てに誘拐されてきた可能性が高かったという。
他の国は、ホウノウストの神殿を敵に回す可能性が高いので、そんな取引はしないが、トラジャは海賊なだけあって盗品でも取引を行った。
「すると、神殿が奪い返した可能性も高い」
「だが、そんな技術は神殿にはない。トラジャの王族の誰かが、攫って返した可能性が高いです」
そして、見返りに他の白の者を融通して貰い、自分達の神官とする。
「神殿か……」
「あの、夏目さんは、神殿には行った事がないのですか?」
そして、いつの間にかソウが俺の事を名前で呼んでいた。
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