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「行った事はない。俺は、どこの神殿にも属していないし……仕事でアルパスに来ていた」
「そうなのですか……ならば、ゴウバイ様の神官になって下さい!!!!!」
会ったばかりの人間に、頼むような事ではないだろう。しかも、俺は今、この船の捕虜だ。頼むのではなく、命令するほうが正しい。
「そうです!!夏目さん!!ここまで、綺麗に真っ白な人間は見た事がありません!!他の神官の比ではない!是非、ゴウバイ様の神官になってください!」
「そう真っ白、ハハハハハハ。凄いな……まつ毛まで白い……」
ミンドは笑ってから、改めて俺を見て、驚いていた。
「雪の精みたいだな……白くて、キラキラ。雪の妖精。しかも、透明なガラスの目。中身は猿だけどな。ハハハハハハハ」
「妖精ではない!」
しかし、猿は否定できない。
「ここには海があって、満天の星空。そして酒がある。他には何も必要ないのに……」
「…………ゴウバイ様も、同じ事を言っていましたよ。家の事とか、王族のゴタゴタとか、本当に煩わしいようでした……」
だから、ゴウバイは海賊になり、気ままに海上暮らしをしていたらしい。だが、ゴタゴタが海にまでやってきた。
「ミンド、俺の剣はあるか?」
「危ないので預かっています。夏目さん、捕虜ですからね。ハハハハハハ」
その剣は、ミンドの腕力でも壊れる事はないだろう。
「ミンド、俺の剣を使っていい。それと、もう一本あっただろう。それを、スースーが使うといい。特殊な金属で作ったから、刃こぼれしない」
そして、ソウにはクロスボウの使い方を伝授した。
「道原、銃を使っていい」
「夏目さんは、何を使うのですか」
俺は服の下に隠し持っていたナイフのコレクションを道原に見せた。
「先程、武器は全部取り上げられましたよね?????」
「奪い返しておいた」
銃も使いたいが、道原のナイフ捌きでは、海賊に太刀打ちできない。
「さてと、囲まれたな」
「そうですね」
この船は、他の海賊に囲まれてしまった。そして、口々にショウキの失態のせいで、次の船が来なかったと罵っていた。
だが、元々ショウキの失態を理由に、この船を襲う予定だったのだろう。
「え?夏目さんも戦うのですか?ハハハハハ。夏目さん、捕虜でしょう???」
「これは、本当に乗り掛かった船だな」
それに、他のトラジャは知らないが、ここのメンバーが気に入ってしまった。
「道原、照明弾の代わりに、花火を打ち上げてみろ」
「はい!」
海は夜で、周囲の様子が分からない。そして、道原が撃ちあげた花火で浮かび上がったものは、数十もある筏の海賊だった。
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