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俺は周囲を確認し、自分の姿を鏡に映した。そして、トイレを探すと用を足し、再び鏡を確認した。
「俺、ドレスを着ているけど……」
「俺も、スーツを着ています。まるで、姫様の学園ですね」
鏡を見ると、青いドレスを着ているが、重大な問題があった。
「夢の中に入ると、部外者になるのだと思っていたが、このドレスは姫様のものだな」
「そうですね。こっちには、この体の持ち主の記憶もあります」
道原も、別の誰かになっているらしい。
「夏目さんは、姫様ですか。この体は、クロエ・素・イリという、姫様の執事のものです」
「俺は姫様ではない」
鏡に映った姿は、十代前半の姫様のようだった。しかし、重大な違いがある。
「夏目さん。どう見ても、姫様です」
「いや、先程、トイレで確認してきたが、ちん〇ん、ついている。俺は男だ」
ドレスを着ているが、俺はちゃんと男だったので、胸は全くないし、ちん〇んが付いている。しかも、俺にはこの少年の記憶が全くない。
「こいつは、誰だ?」
「姫様は、シュリヤ・真珠・アルパス。生まれた時から、真っ白な髪で、真珠と呼ばれた少女です。目はアイスブルー。俺は、宰相の六男で、姫様の二歳年上。執事兼幼馴染」
道原がクロエになっているのは、この六男で、父親が有力者という所が似ていたせいなのかもしれない。しかし、道原によると、姫様、シュリヤはちゃんと女性だったという。
「これは、姫様の影武者か?」
「そうなのかもしれませんが、クロエにも現在の記憶が残っていません」
そして、状況を確認してみると、現在地は俺達が本棚を見つけた部屋だった。
「クロエによると、色々と状況が違っています」
まず、どうしてシュリヤが城から出されたのかと言えば、王であり父でもある、トウゴ・賽・アルパスは妻の病気の結核が感染すると知っていた。そこで、妻を部屋に隔離したのだが、一人娘のシュリヤに会いたがり、困った王は理由を付けてシュリヤを外に出した。
それが、妻が子供を溺愛し自分を見ないので、離れさせたという話になったらしい。
そして、シュリヤの母、ルウ・縁・アルパスが亡くなって、後妻がやってくる段階になり、シュリヤの存在が問題になった。
「後妻のマイカ・楓・ゾウエンは隣国の王族かつ商家出身で、この国の権力を欲した。そして、理由を付けては、シュリヤを排除したがった。更に、シュリヤには常に刺客が送られてきた」
「そこで、失踪した事にしたのか……」
この城は、トウゴの実弟、イリエ・論・アルパスの住居で、シュリヤを匿ってくれていた。
「ここには、シュリヤの従妹、シエル・優・アルパスと、ジュノン・愛・アルパスという二人の少年がいます」
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