第一章 小さな国

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 トウゴは、自分に何かった場合は、実弟のイリエに王の座を任せると公言していた。そして、その後は、イリエの長男のシエルが王を継げばよいとも言っていた。  だから、余計にマイカが怒り、自分が産む子供こそが跡継ぎだと主張してしまった。 「それでゆくと、シュリヤは跡継ぎではないだろう?」 「しかし、王がどう言っても、第一継承権を持っているのは、シュリヤでした」  だから、シュリヤは失踪して消えた事になり、イリエの元でひっそりと生きていた。 「…………この姫、ひっそりと生きられたのか?」 「そこが問題で、シュリヤは男装して男として学校に通っていたようです。多分、その時に必要になった替え玉が、夏目さんです」  シュリヤは男として学校に通っていたが、身体測定や水泳、スポーツなど、女性だとバレやすい場面もあった。そこで、そっくりな少年を探し、そういう時は入れ替わっていたようだ。 「それで、こいつは誰なのだ?」 「名前も無い少年。周囲からは、シュリヤ様と分ける為に、真珠と呼ばれていました」  そこは、クロエの記憶には無いので、残っていた文献を道原が読み漁っていた。  だが、どうして道原にはクロエの記憶があるのに、真珠には何の記憶も残っていないのだろう。 「まあ、大体の状況が分かった」 「今の説明で、分かりましたか????」  人間関係と、現在の自分の姿で、察せる事は理解した。  シュリヤの従兄弟、シエルが学園の先輩で、多分、クロエの学友といったあたりだ。そして、ジュノンとシュリヤが同学年で、二人の従兄弟はシュリヤの秘密を共有していた。だから、男装して学園生活を送る事が出来た。  もしかすると、学園全体が、シュリヤが女性という事に気付いていたのかもしれない。  それでゆくと、クロエに真珠の記憶が欠如している事がおかしいが、俺の中の記憶も消えているので、何か補正のようなものが入ったのだろう。夢というのは、何でもありだ。  そして、満原は三毛の見ている過去が、まるで現実のようだと感動していた。 「現実か、コレ?こんな国は、歴史上存在していたか?」 「そこがファンタジーでいいです!」  ゲームの中に生まれ変わるという話は、よくアニメであったが、これはただの夢で生まれ変わりではない。だから、過ぎた日々を体験するもので、何かを考えてはいけないのかもしれない。 「それで、道原、執事が替え玉の事を知らないという事は、この替え玉が怪しい」 「何が怪しいのですか?」
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