第一章 小さな国

6/8
前へ
/117ページ
次へ
「この容姿だと目立つのか……」  真珠はシュリヤと同じく、真っ白な肌と髪で、目はアイスブルーだった。だが、これは合わせているというだけで、本当の髪の色は、少し違っている。 「髪は染めればどうにかなる。ケド、これ本当の髪の色ではないな……」 「本当の色は、水色だったと聞きます」  水色の髪というものが、存在するのだろうか。 「だが、現在は真っ白が地毛で、成長するにつれ更に白くなっていました」  確かに、全身が真っ白で、どこにも色がない。 「まあ、ジュノンも真珠の正体を知らなかったのか。それに、イリエ様も知らされていなかった」 「正体???」  そこで俺は、真珠は王でありシュリヤの父でもあるトウゴに雇われた、護衛だった可能性を教えておいた。 「真珠は、十歳くらいから、ここにいます」 「その年齢でも、裏の社会では立派な成人だよ……」  それに、真珠は年齢を誤魔化していたので、本当は俺の見立ての通りに、十五歳かそれより少し上といったあたりだろう。 「それで、姫様はいつ消えた??」 「…………それが、正確には分からないのです」  シュリヤの従兄弟である、シエルとジュノンは、妖精召喚にも動じず、真面目に信じてくれ事から、柔軟な思考の持ち主だった。だから、シュリヤが男装して学校に通う事にも、協力してしまったのだろう。 「学園は武道大会の真っ最中で、授業どころではなかった。私はシュリヤの級友ですが、シュリヤは優勝候補でずっと闘技場にいた」 「つまりは、闘技場にいたのは真珠だった」  シュリヤは剣には優れていて強かったが、武道は弱かった。それに、どちらも真珠の方が、各段上で、学園では敵う者がいない程だったという。  十五歳になれば、男女の力の差も出てくるので、シュリヤが不利になっていた事は間違いない。 「そうです。それで、真珠が優勝して、この家に帰った時には、シュリヤがいなくなっていた」  武道大会の後に祝宴があり、皆でキャンプファイヤーをしていた状態だったらしい。流石に、優勝者の真珠も抜ける事が出来ず、かつ色々な役職にあった、シエルとジュノンも家に帰れなかった。 「クロエは何をしていた?」 「基本はシュリヤ様の執事なので、真珠と一緒にいるしかなかった……」  入れ替わっていても、優勝したのはシュリヤという事になっていたので、闘技場にいたという。 「……では誰も、シュリヤには付いていなかったのか……」 「そうなります」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加