第一章 小さな国

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 それは、最大の落ち度だろう。  しかし、この城は警護されていた、犯罪が少ない場所だった。そして、街の住人も、シュリヤを見守っていて、全員が警護していた状態だったらしい。  だから、全員がシュリヤを放置していた状態になった。 「武道大会は何日間あった?」 「十日ほどです。その前半には、シュリヤ様も観戦に来ていました」  俺がドレスを着ていたのもそのせいで、シュリヤはイリエの妻、ノーラの妹の娘として出てくる時もあり、シエルとジュノンの試合を観戦していたらしい。 「三日前には、一緒に食事をしました」 「幾つかの種目があって……でも、どれも、決勝から先になると、家族でも会えなくなる」  それは、試合結果が賭けの対象になっているので、家族でも面会をさせず、情報を制限しているせいだった。そして、シエルもジュノンも剣や弓で勝ち進んでいて、シュリヤの替え玉の真珠も残っていた。 「昨日、家に帰って来て、シュリヤがいない事に気付いて、家族全員で探しましたが、見つけられなかった……」 「両親も、学園で役員をしていたので、家に帰っていなかった……使用人達はシュリヤも学園に行っていると思っていた」  それは、確認不足としか言い様がない。  そして、いないと気付いてからも、もう一日が経過している。 「遅い!誘拐だったとして、最悪、もう四日も経過している!」  誘拐は時間が勝負という面もある。  時間が経過する程に、助け出せる確率が減ってくるからだ。 「シュリヤは、よくいなくなっていて……それで……」 「帰って来るかと思ってしまって……」  しかし、シュリヤがいなくなっている時はあっても、きっとクロエが一緒だっただろう。 「地下通路を確認する」 「同行します」  しかし、その前に着替えておきたい。  どうして真珠がドレスを着ていたのか分からないが、このドレスには、宝石なども付いていた。このまま逃亡しても、きっとこの宝石で、数年は暮らしていけただろう。  しかし、真珠が逃亡しようとしたとは考えられない。  きっと、姫様はここにいて、誘拐したのは偽物だと言いたかったのではないのか。そして、交渉して姫様を戻して貰い、最悪、自分が代わりに行こうとしていたのだろう。  だが、それがままならない状況になり、悪魔を呼び出すまでに追い詰められた。 「悪魔ではありません、妖精です」 「人の思考を勝手に読むな」
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