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写真部は一ヶ月ごとにテーマがあって、それをもとに写真をとって三位まで順位づけされる。
六月のテーマは「雨上がり」だった。
「みんな、気合いいれて頑張ろうね」
菅野さやかという写真部の副部長は僕と太陽くんの一個上の先輩で、普段は子供みたいに明るいけど写真を撮るときは静かで大人っぽく見える。
「かっこいいよな」
太陽くんはいつもさやか先輩に憧れを抱いていた。写真部の窓から何かを撮影するさやか先輩を見て
「俺が写真部に入ったきっかけはさやか先輩なんだ。さやか先輩に写真のとりかたを教えてもらった」
と話す。にこりと笑うその太陽くんの顔はどこか照れくさそうだった。
「さやか先輩の写真が好きなんだ」
太陽くんはよくさやか先輩の側に行っては写真を習っていた。
「ここはね、こうして」
「なるほど」
何度も頷きメモを取る太陽くんの姿勢は必死すぎて、僕はいつもその光景を遠目に一人微笑ましく見ていた。
さやか先輩のメモを持ち、太陽くんは僕のもとに戻ってきて、
「六月のテーマでは絶対一位をとる」と
意気込みをいれていた。さやか先輩は写真部のお題で三ヶ月連続一位をとっている。
太陽くんを見ていると、毎日毎日一刻も早くさやか先輩に追いつきたいという姿勢が伺えた。
「六月は一日も休まずに放課後どこかで写真を撮ろうよ」
太陽くんがそう誘ってくれて、僕にも気合いが入った。
一日目、最初にあじさいの咲く公園、
二日目、次に坂道の上の水溜まり
三日目、学校の写真部
テーマに添う景色をたくさん探し、写真をとって走り回った。
それがいけなかったと思ったのが
六月のテーマの三日目の帰り道のことだった。
太陽くんは突然僕のとなりで倒れた。
その日、僕はようやく理解した。
太陽くんの寿命が残り一ヶ月だということ。
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