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さやか先輩と最初のお題をこなす。
「最初は公園だったね」
「はい」
「まずはね、気になったら後先考えずにすぐ撮ってみるの。それが結構なコツだったりする」
僕はかしゃりとかしゃりと撮っていく。
そのうちの一枚の写真は
ブランコと木々の入った自然溢れる写真だ。
「これでいいね。次は紫陽花。花を撮るときはまず自分が綺麗だと思う場所を探してみること」
「綺麗だと思う場所?」
「例えば普段見てない花の下から撮るとね花びらの形を知れたり発見が色々あるよ」
僕はさやか先輩のアドバイスをもとにかしゃりとかしゃりとまた写真を撮る。
そのうちの一枚はローアングルから撮った空に向かうように咲く紫陽花だ。
「さやか先輩、これはどうですか?」
「いいと思う」
「よかった」
「じゃあ次は水溜まりね」
奇跡的にまだ乾ききってない水溜まりを発見して、僕はかしゃりかしゃりと写真を撮る。
水溜まりにはすぐにアドバイスがなくて、さやか先輩もどう教えたらいいのか分からず少々苦戦しているようだった。
「……さやか先輩は何で写真部に入ったんですか?」
僕はふとそんなことを聞いてみたくなった。
「なんとなくだよ。でもね、部活に入って続けてたら、一年後に後輩が入ってきたの。
わたしには存在していないきらきらした目でね世界を見ている人だった。そこからなんとなくをやめた」
「さやか先輩……それ」
「水溜まりには晴れた空がうつるようにしたらいいんじゃないかな」
さやか先輩の意見をすぐに取り入れ
アングルを変え、かしゃりと一枚。
「夏目くんも泣いてばかりじゃだめだよ。
泣いたらちゃんと虹にしなくちゃ」
水溜まりには虹が映っていた。
その水溜まりを見つめながら、さやか先輩は小さく口を開く。
「ねえ、夏目くん私は……太陽くんのこと好きだったのかな」
思わずくちごもるの僕の隣で、
さやか先輩の携帯が震えた。
「アラーム。太陽くんの葬式の時間だ」
「急ごう」
「うん」
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