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真っ黒な日々
子供は産まれる場所を選べない。育つ家庭も親も、俺の日々はキラキラと輝く日々とは縁遠い。
「お帰りなさい。坊っちゃん!!」
十四年間、俺は明るい表舞台ではなく暗幕の中の日々にいる。イカツイ兄貴たちに育てられて嬉しかったのは、幼少期までだ。
「ウゼ」
黒スーツを着こなしている兄貴たちが出迎えてくれる。
「おい、ウザイとはなんだ」
縁側から俺に声をかけてくれる親父に兄貴たちは視線や体勢を変えて、俺を出迎えたときよりさらに深く頭を下げている。
「ウザイから、ウザイって言ってんだよ!!」
俺の家がそういう社会とのお付き合いが多いから友達だってできたことない。
『伊野尾と話したら生きて帰ってこれないぜ』
完全にクラスから浮かれて、先生だって怖がって俺に授業の回答を当てさえしない。怖いものは見ないふり、知らないふりをするのが一番だってみんな気づいている。
「頭、今だけですよ。そのうちこちらの社会に馴染みますって」
こんな世界に馴染みたくない
そう思っていても俺には逃げ場がない。黒い場所からどこかへ逃げればいいと毎日思っている。
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