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黒い日々にサヨナラを
ファミリーレストランを出ていく背中を追いかけて、どしゃ降りのなかを走っていく。
隣接された駐車場に停められている黒いリムジンに乗車する前に親父たちに追いついた俺は、先を行き親父と対面で向き合う。
「お嬢さんを一人にしておくな」
「親父、兄貴たちも今まで俺を育ててくれてありがとう」
雨が俺の黒髪を濡らしていく。兄貴たちは親父に傘を差し続けたまま、もう俺の方に傘を差すものはいない。
「挨拶だけは言うこと聞いてくれたんだな」
どんなときも礼儀を大切にしろ
唯一親父の言うことで正しいと思ってしてきたことだ。
「おい、剛史にアレを」
兄貴の一人が紙袋に入ったものを押し付けてくる。親父は一言だけ言ってリムジンに乗車していく。
「似合う男になれよ」
*
制服がびしょびしょでファミリーレストランの男子トイレで受け取った紙袋からタオル手に取り、濡れた髪を拭い身体を拭く。
「少し大きいんだけど」
別れ際に渡された最後のプレゼントは高級スーツ。
洗面所で黒色のネクタイを締めていく。
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