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中学二年になりクラスメートは未来に向かって明るく話している。たいして俺はもう確実に決められている未来。
「剛史くん。お帰りなさい」
育ての母親とは馬があわない。俺を産んだ母親は手切れ金と共に姿を消した。この黒い日々から逃げ出すように・・・・
「くん付けで呼ぶな!!」
環境が良ければなんて思ったことは何度あっただろうか?育ててくれた兄貴たちに影響され口が悪くなった。口の悪さを喜んだのは親父と育ててくれた兄貴たち。
俺は確実に真っ黒な日々にまた一歩近づきつつある。
*
奥の部屋へと向かっていたとき、背中越に片方だけ担いだリュックサックからラインの通知音が鳴る。
委員長の個人ラインからメッセージが届いていた。
【伊野尾さん、春山です!!これから勉強を見てもらいたくメッセージを送りました】
春山向日葵二年二組の委員長で名前の通りまっすぐで、俺のことを太陽だとか言って勘違いしている女子。
生真面目な女子がちょいワルに恋するタイプの性格なんだろう。
「俺が勉強見なくても上位にいるだろう」
「剛史坊っちゃん、そんな優しい顔を向けてこれですか」
足音もせず近づいてきた兄貴たちに茶化される。
「クラス委員長に目をつけられただけだ!!」
「そのうちこれに」
兄貴の一人がまた小指をたててニタリと笑う。俺に恋なんてできやしない。俺と恋をするってことは、知らないでいい日々を、見たら心痛める日々を見るだけだから。
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