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何分経ったのだろう?仲のいい友達がいたら異変に気づいて先生を呼びに行っている。
けれど、私はみんなに嫌われるようないい子さんで、女子の友達も男子の友達もいません。
『こわいです。ごめんなさい』
廊下にはもう彼女たちはいない。震えている声だって聞いていないのに、私は必死に前後の扉を叩き続けた。掃除時間が終われば授業になる。さすがに先生が気づくはず。
『おい、伊野尾!!掃除当番サボってどこに行ってるんだ!!三芳たち脅してなにしてるんだ』
三芳さんは私を閉じ込めたリーダ。伊野尾さんがなぜ?
がちゃりと前方の扉が開いて、埃にまじり白い光が射し込んでくる。
『委員長、見つけた!!』
伊野尾さんは、かくれんぼをするときみたいに私を人差し指で指してにこりと微笑む。
茶髪でツーブロックの髪型、眉は剃られていて大きなつり目がこわいとおそれるクラスメートや先生が多いけれど、私はこの笑顔に心を奪われていた。
『伊野尾さん、ありがとうございます!!』
『春山、どうしてこんなところでサボって・・・』
『サボってなんていない!!本当はここが俺のサボり場所だったのに、三芳たちに先取りされた!!』
伊野尾さんのサボり場所はここだったんですね。探しても見つからないのは渡り廊下を渡った反対側の校舎だから。
『伊野尾さん、このご恩絶対忘れません』
私はあの日から部屋を暗くして寝れなくなった。あとで、周囲のクラスメートの証言もあり、三芳さんたちが謝りに来たけれど、四年経った今も真っ暗な場所は苦手。
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