黒夜に流れる思い出は

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透き通るような声が、闇と香が作り出した夢幻を切り裂いた。 「無理強いなさってはいけません。本当にお兄様がその方を愛しているのならば、その方のあこがれを傷つけてはなりません」 少将殿の手が私から離れた。私は身動きもできず、床に崩れ落ちた。 「おまえに何が分かる。女でないというだけでずっとそばにいても気づかれもせず、ただお前を慕うための鏡の役割をしていたのだぞ」 「お兄様こそ何も分かってはいらっしゃらないのね。その方をお慕いしていたのはお兄様だけではなかったのに」 「どういうことだ」
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