雨上がりの天使の梯子

1/1

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

雨上がりの天使の梯子

 俺は会計を済ませ外に出た。空を見上げると雨は上がっていた。雨に濡れた街は雨の雫を優しく、そして温かく纏っているように見えた。 「俺もいつか淋しさや悲しみにさよならだ」  心に刻まれた淋しさや悲しみはいつか消えるだろう。いや、消えなくていい。淋しさや悲しみがあってこそ俺は心から温かく笑えたのだから。  落ちることのない空は頭上に広がり、そして空を覆っていた分厚い雲に切れ目が出来た。一本、一本とまばゆい光のすじが俺に舞い降り届く。俺の心を導くように天使の梯子が優しく架かった。  俺はそれを見届けると、もう一度、微笑み彼女たちに背を向け歩み始めた。 〈了〉
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加