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雨上がりの天使の梯子
俺は会計を済ませ外に出た。空を見上げると雨は上がっていた。雨に濡れた街は雨の雫を優しく、そして温かく纏っているように思えた。
「俺もいつか淋しさや悲しみにさよならだ」
心に刻まれた淋しさや悲しみはいつか消えるだろう。いや、消えなくていい。淋しさや悲しみがあってこそ俺は心から温かく笑えたのだから。
落ちることのない空は頭上に広がり、そして空を覆っていた分厚い雲に切れ目が出来た。一本、一本とまばゆい光のすじが俺に舞い降り届く。俺の心を導くように天使の梯子が優しく架かった。
俺はそれを見届けると、もう一度、微笑み彼女たちに背を向け歩み始めた。
〈了〉
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