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気まずさ
それから四年の月日が流れた。彼女も大学を卒業して普通に就職し新たな道を歩み始めた。俺もあの頃から成長して係長として業務をしている。同期で一緒に入った奴等と比べれば出世組だ。そろそろ考えてもいい頃かと思った。彼女がどう思っているか分からないがそっと打ち明けてみる。
「なぁ、俺たちそろそろ結婚しないか?」
突然のことに吃驚し押し黙る彼女。
「まだ仕事、始めたばかりだし……」
煮えきらない態度を取る彼女。
「本当にそれだけ?」
俺は彼女の不安を聞き出そうとつい口に出してしまった。
「ど、どうしたの? そ、それだけよ」
「やっぱり。どうしても何かあるとその吃り癖は治らないみたいだな」
「えっ!?」
俺は彼女に対しての不安を口にした。
「もし、他に好きな人がいるなら正直に言ってくれ。ちゃんと話は聞くからさ」
彼女は手を強く振り、首も振った。
「そ、そんなんじゃないの。そんなんじゃ……」
彼女はそれ以降、口を噤んでしまった。この時以降その日は吃りが治ることはなかった。なんだか気まずい時間だけが二人に流れた。
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