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2話 初対面のはずなのに……?
義母様の後を追うと、応接間にたどり着いた。
その部屋の扉を義母様が開くと……
「どうも、ブルーベル侯爵夫人。」
男性の声が聞こえた。
部屋の中には、大勢の皇宮からの使者、大勢の隣国の従者、そしてその中に一人、豪華な服に身を包んだ、金髪で爽やかな男性がいらっしゃいました。
おそらく彼こそが隣国の若き王とやらなのでしょう。
そんな彼は、義母様の後ろに私がいるのを確認すると。
「突然の訪問で申し訳ない。後ろにいるのが、侯爵令嬢か?」
声をかけられました。
それに驚いた私は内心驚いていましたが、このような場合、取り乱してはいけません。
相手は敵国の王、ここで無礼を働けば、最悪首が飛びます。
凛として、対応しなければなりません。
いつも通り、顎を引き、片足を引き、ドレスの裾をつまみ、余裕のふりをして微笑んで優雅に挨拶をするだけです。
「お初にお目にかかります、アイリス・ブルーベルと申します。」
私の耳には自分の心臓の音がバクバク聞こえてきます。
しかし、長年の教育の賜物、完璧な振る舞いができたと思います。
「ほう……噂通りだな。さすが皇太子妃最有力候補だったことはある。」
「そんな、滅相もございま……」
国王にそう声をかけられ私は顔を上げると、ふと懐かしさを感じました。
この顔………どこかで見たことが……もしかしてお会いしたことが………?
「どうかしたか?そんなに俺の顔に見惚れたか?」
「いえ、そうではなく………以前どこかでお会いしたことがあるような……」
「失礼だぞ」
私がそう口をこぼすと、義兄にそう咎められ、肩をグッと強めに掴まれました。
無礼がすぎるという忠告のようです。
その通りです、私としたことが……このような不用意な発言をするなんて、侯爵令嬢としてあるまじきこと。
「失礼いたしました。」
私はもう一度、お辞儀をして隣国の王にお詫びをしようとしたのですが、その前に国王は私の肩を掴み、それを静止しました。
そして、私の顔の右頬を触ると……
「頬が腫れてないか?どうした?」
私のことを気遣ってくださいました。
敵国の王様っていうから、もっと怖い人を想像していたのですけど、意外にお優しいのですね。
少なくとも、うち屋敷の人間よりマシそうです。
「転んでぶつけてしまいまして……」
「それは大変だ、すぐ冷やすものを」
そう言って、隣国の国王様は、自分の従者に指示を出しどこから出したのか、なぜ持っているのか、氷を取り出し、氷枕を作り私にそれをくださいました。
手厚いです。
その様子を面白く思うはずもない義兄は、隣国の王に機嫌悪く声をかけました。
「それで、隣国の王様が、このような場所にどのようなご用件で。」
「あぁ、そうだった。そろそろ本題に入ろう。私は……」
そういうと隣国の国王は指でパチンと音を鳴らすと、またしても彼らの従者がどこからともなく薔薇の花束を取り出して、国王に渡しました。
そして、隣国の若い王は、その受け取った花束を私に向け……
「私と結婚してください」
ストレートな求婚を受けました。
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