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3話 求婚
「国王の伴侶……王妃ということですか?」
突然のことに理解が追いつかず、言葉に詰まっていると、義兄様が隣国の王にそう問いただしました。
その言葉に反応した義母様はハッとすると、声を荒げてこう言いました。
「冗談じゃございません!うちの家系から、あなた方の国の皇后を輩出させろと?ふざけたことを言うならお引き取りを!」
「娘を皇太子妃にするのが夢なのだろ?喜べ、うちにくれば娘は王妃になれる。」
「ご冗談を……ブルーベル一族は、国軍総統として、代々皇帝陛下に忠誠を誓い、敵国と戦ってまいりました、なのにあなたの国へ嫁ぐ人間が出たら、その忠誠心を疑われます!」
義母様は唇を噛み締め、両手に拳を作り、ワナワナと震わせながら恐れ多くも隣国の王にそう言い放ちました。
当然、後継の義兄だって黙っていません。
「大体、なぜうちなんです!?このような政略結婚は普通皇族同士で……」
「今この国に未婚の姫はおらず、未婚の女性で一番地位が高いのが彼女。」
そういうと、隣国の王の手が私の肩に触れると、ぐいっと引き寄せられました。
そして義母様たちに見せつけながらこう言います。
「それに敵だったのは昔のこと、戦争は終わりこれからは友好を結ぼうとしているのだ。」
「お黙りなさい!敗戦したわけでもないのにこのような取引………」
「おや、敵国の王に向かって、そんな言葉遣いをしていいのか?」
激昂する義母様に、余裕の表情でニヤリと笑う隣国の王は
「アイリス嬢、10も20も年上の相手の後妻になるか、同年代の敵国の王に嫁ぐか、どちらを選ぶ?」
そんな質問を私に質問を投げかけてきました。
「決めるのは君だ。こんなくだらない奴らに人生捧げるか?」
「おい、いい加減にしろよ!」
「断ってどうなっても構わないわ、敵国の妃の汚名を被るよりはマシです」
殿下のその言葉に、義兄様も義母様も大反対で、隣国の王に噛み付きました。
王妃になっても、敵国では歓迎してもらえるとは思えない、扱いも悪いかもしれない。
でも……この利益と権力にしか目がないこの親子のいうことを聞いて、何かメリットはあるでしょうか?
答えは明確でした。
「私…行きます。」
「なんですって?」
「国のためになると言うのなら、今すぐ、荷物をまとめ、そちらへ赴きます」
それに………この人はお慕いしていた人ではないけれど、この人なら大丈夫な気がする。
そう思った決断でした。
「これは、話がはやい。それではすぐにでも出立しよう。」
「待て!」
そんな私の腕を掴み義兄様は私を引き留めました。
義母様もそれを許すはずもなく、私に詰め寄ると鬼のような形相で詰め寄りました。
「頭を冷やしなさい!」
この勢い、隣国の王さえいなければ、また頬を殴られていたことでしょう。
しかし、もうこれ以上黙っているのも限界です。
「汚名を被るのが嫌なだけではないでしょ?大金が入る可能性が消えるのが嫌なんでしょ?40代の公爵家の後妻の話がまとまりかけていたから。」
図星の彼らは、私に言い返すこともできず苦虫を噛んでいる様子でした。
「厄介払いできてよかったですね」
そう言って彼らに背を向け、応接間を出て行きました。
「絶対に連れ戻すから!」
そう後ろから声が聞こえたのは、きっと気のせいでしょう。
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