5話 隣国の侯爵令嬢歓迎

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5話 隣国の侯爵令嬢歓迎

「気に入っていただけただろうか?」 「は……派手なお出迎えですね。」 「本当はもっと豪勢な出迎えをするつもりだったのだが……流石に間に合わなかった。」 「……。」 よかったですわ。 これ以上のお出迎えは流石に受け止めきれかねますもの。 でも……そんなことよりも気になることがございます。 隣国の貴族が自分たちの国の王妃になろうとしているのです……普通警戒するものではないのでしょうか? 私が姫なら、友好の証とかでいけそうですけれど…… 「敵国の侯爵家の人間の私を……なぜこんなにみなさん歓迎してくださっているんですか?」 至って普通の疑問を隣国の王に問いかけると、王はニンマリ笑って、あるものを取り出しました。 「この本を配ったんだ」 「これは……?」 差し出されたのは新聞と一冊の本。 新聞の一面には『国王陛下まるで小説のような熱愛ゴールイン』 と書かれておりました。 その本というのは……きっと一緒に手渡されたこの本のことでしょう。 『ロベリアとジュドー』 内容はざっくりいうとこんなかんじ。 『昔々あるところに、ある国の王子様が敵国にお忍びで遊びに行きました。』 この時点でツッコミどころ満載でございますが、それはひとまず置いておきましょう。 『王子は旅先で、一人の美しい女性に出会いました。しかし彼女は隣国の侯爵令嬢、国外の女性というだけでも問題があるのに、侯爵令嬢という、ギリギリ利益が出そうで出ない微妙な立場の令嬢を国の王妃として招くのは、王室にとっても国民にとっても抵抗がありました。』 びっくりするくらい状況が現状と一致しておりますわね。 『認めてもらえないのなら、そして来世で一緒になりましょうと、2人は毒薬を準備してそれを煽りました。』 ベタなラブストーリーですわね。 「これが私を歓迎する理由と、どう繋がるのでございましょう?」 「これが今国民の間で広まってブームになっててな。この主人公たちに同情が集まっているのだ」 「つまり……」 「愛する人同士が結ばれないなんて可哀想、自由恋愛が認められるべきだ!という意見が増え始めてな。登場人物と俺らを重ねて応援する声が増えている……というわけだ。」 あれ……政略結婚的な……なんかの取引的な……突発的な取引の結婚だと思ったのですが……。 これ、計画的犯行なのでは? だってこの本……出版年数が3年前ですもの。 でも、私がここに来るのは今日求婚されるまで予期していなかったわけで……3年前って。 「とにかく、アイリス嬢は何も心配はいらない。この国を自国のように思ってくつろいでくれ」 隣国の王に笑顔でそう言われますが……私はそう簡単に信頼できませんわ。 「……お心遣い、痛み入りますわ。」 そう返事はしましたが、どうせ彼のいないところでは、使用人や国民は私のことを悪くいうに違いない。 そう思っておりました。
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