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「美味しかった。ご馳走様。」
「どういたしまして。」
「よし、帰るか。」
「え、帰らないよ?」
晶は俺に言った。
「真斗の誕生日はこれからだよ。」
「もう十分祝ってもらったから。」
これ以上、期待させないでくれ。
俺の事、好きじゃないくせに。
俺の為に、必死になるなよ。
「これみても、帰る?」
「ん?」
「え、ライブのチケット!?即完売したやつ!」
「真斗、高校の時からこのバンド好きでしょ。」
「うん、今も好き。」
「なら行く?それとも、家に帰る?」
晶はずるい。
俺の答えが分かっているのに聞いてくる。
「行く。行きたい...です。」
「ふふっ、素直でよろしい。」
「笑うなよ。」
「だって、真斗が面白いから。」
晶が俺の隣で笑っている。
つられて俺も笑う。
幸せだ。
だけど、晶は近くて遠い。
俺にはまだ彼の手を握る勇気がない。
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