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ライブ会場まで、電車で4駅。時間にすると、約30分。
しかし、車内は、ライブに向かう人々でごった返していた。
「平気か?」
「うん。」
俺は小柄な晶をドアの近くに誘導し、彼の前に立った。
目的地に近づくにつれ、どんどん人が乗ってくる。
俺は押しつぶされそうになりながらも、晶を支えた。
「真斗、こっち来ていいよ。狭いだろ?」
「大丈夫。あと、1駅だし。」
「でも...」
俺が戸惑っていると、発車するタイミングで、電車が大きく揺れた。
そして、俺はバランスを崩し、晶の方に倒れた。
「わるい。」
俺はすぐに体勢を立て直した。
顔を上げると、至近距離に晶が居た。
俺よりも小柄な彼を見上げることはほぼない。
だからだろうか?
晶がいつもより格好よく見えた。
俺が晶に見惚れている間に、電車は目的地に到着した。
車内アナウンスを聞いて、我に返った俺は、気の抜けた表情を引き締めた。
そして、俺は晶の手を握った。
「握ってて、はぐれたら大変だから。」
「うん。」
晶の手をなんの理由もなく繋げる日は来るのだろうか。
彼に触れる度、好きが増す。
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