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「ね、真斗。」
「なに?」
俺が立ち止まると、晶が俺の手を握った。
「俺から離れないで。」
「それ昨日も言ってた。」
「後藤さんにチケットを譲ってもらったんだ。」
「うん。」
「真斗のこと格好いいって話したら会ってみたいって。」
「うん。」
「でも、ほんとは会わせなくなかった。」
「なんで?」
俺は晶の顔を覗き込んだ。
「真斗に興味を持って欲しくない。」
「なんだよ、それ。晶に言う権利ないだろ。」
しまった。
今までの苦労が水の泡だ。
しかし、俺の口は止まらなかった。
「毎週、違う香水の匂いつけて俺んとこ来やがって。俺が何とも思ってないとでも?俺はそんなできた人間じゃないんだよ。」
ああ。終わった。
晶が苦手なめんどくさい男になってしまった。
「真斗...」
その証拠に晶は握っていた俺の手を離した。
でも、これでよかったんだ。
報われない恋なんてするもんじゃない。
「俺、帰るわ。ごめん。チケット返すから後藤さんとみてこいよ。今日はありがとう。」
俺は晶の顔を見れなかった。
見たら本当に終わってしまう気がして。
俺は俯いたまま、その場を去った。
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