サプライズ

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「いらっしゃいませ。」 「二名で予約している本郷です。」 「お待ちしておりました。ご案内致します。」 晶が俺を連れてきたのは、高級フレンチレストランだった。 こんな高そうな所で食事をするのか? 俺は財布の中身を確認したい衝動に駆られた。 「ここの料理はどれも絶品なんだ。だから、真斗と食べたくて。」 「そうなんだ。」 「料理は俺が選んでいい?ワイン飲めるよね。」 「ああ。任せる。」 「わかった。」 目の前にいる晶が別人に見える。 俺の知らない所で、こんなにも高級な店に通っているなんて。 それもそうか。 晶は毎週土曜日に俺の部屋に来るだけ。 それ以外の彼を俺は知らない。 「真斗?具合わるい?」 「いや、大丈夫。高級な店に慣れてないだけ。」 「俺も。今日は特別だから。」 晶は俺に微笑んだ。 ちょうどその時、晶が注文したワインが運ばれてきた。 そのワインのラベルには〝1999〟と書かれている。 今から25年前。今日は、7月の... 「やっと思い出した?」 「うん。」 「真斗、誕生日おめでとう。」 「あ、ありがとう。」 「もう!毎年、自分の誕生日を忘れるんだから。」 「すまん。」 「だから、来年も俺が祝ってあげる。」 俺はこの時の、晶の笑顔を一生忘れないだろう。 だから、俺は晶への片想いをやめられない。
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