第1話 勇者召喚

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第1話 勇者召喚

女神 「数多の勇者を召喚してどれほど経つのかしら。 もはや私の力では、勇者を討つほどの力を持つ、勇者を召喚できるのが最後になるかもしれませんね。 いやもうほとんど期待はできないのかもしれません…。 それでも召喚の女神として、 最後の望みをかけてやるしかないのよ、 頑張れ私。 ふぅ……さぁ始めましょう! 異世界にて生を失いし心強き勇者たる者よ! 我が呼び声に応えよ! 召喚魔法! サモンブレイブ! 」 詠唱が終わると共に、眩い光が魔法陣から発せられ、 部屋中が光で満ち溢れる。 女神 「これほどの光は初めてだわ! きっと優秀な勇者が召喚されたのかもしれません! お願いします…どうか! 」 光が段々と収まっていく。 そして魔法陣の中央に、1人のシルエットが現れ出した。 光が収まると共に、その姿は鮮明になっていく。 召喚者 「ここは、 どこだろう…。 」 その者は周りをキョロキョロと見回していた。 女神 「驚くのも無理はありません。 貴方はゆえあって、 神界に召喚させていただいたのです。 急なことで申し訳ないのですが、 どうか私達に手を貸して欲しいのです。 」 召喚者 「召喚? んーファンタジー小説みたいな物、 なのかな? えっと女神様?で良いんでしょうか? 力を貸すというのは、 どういう事なのでしょうか? それになぜ僕が選ばれたのでしょう。 僕はしがない大学生なのですが……。 それに死んだはず? だと思うのですが…。 」 青年は首を傾げ、 不思議そうに尋ねた。 女神 「そうですよね、 一つずつ質問に応えていきましょう。 まずは自己紹介をしますね。 私は生死を司る女神、イナンナと申します。 以後お見知りおきを。 異世界から召喚なども、 私が執り行ってます。 こう見えてすごい女神なのですよ? 」 イナンナは少し自慢げな表情を浮かべた。 召喚者 「イナンナ様ですね。 ぼっ僕は真柄 直樹です! よっよろしくお願いいたします!」 直樹は見事なまでのお辞儀をした。 イナンナ 「うふふ貴方みたいな、 素直な子に出会え て良かったですわ。 それで次の質問にいきますね。 実は私達の世界は少々、 込み入った問題に悩まされてるのです。 それは……、 少々申し上げにくいのですが、 どこから話したらいいものか……。 そうですね、 最初から話すべきでしょうね、 元々私達の世界は、 魔族に脅かされてました。 そのままでは人類が絶滅してしまう、 そんな状況に置かれてました。 そこで私達神は、 異世界より強力な勇者を召喚し、 彼らに世界を救ってもらう、 考え、議論の末、 そう対処すると決めたのです。 私達神が、 直接手を下すのは禁じられてたので、 そうせざるを得なかったのです。 最初は上手く行ってたのです。 最初の勇者が魔王を討ち、 世界は平穏を取り戻した、 そう思いました。 しかし、 事件は起きてしまいました。 最初の勇者が魔族を乗っ取り、 今度はその者が魔王となってしまったのです。 私達は焦りました。 世界を救うために呼んだ者が、 今度はその者が、 世界を脅かそうとは……。 」 イナンナは悔しそうに唇を噛み締め、 拳を握っていた。 イナンナ 「ですが私達が直接、 何かをすることは規定によりできません。 そこで私達は再び勇者を召喚し、 その者に頼ることにしたのです……ですが、 その者はあろう事か、 新たな魔王に与してしまったのです! そこからは負のスパイラルです。 私達は度々、 勇者を召喚しました。 しかし、 ある者は魔王に与し、 ある者は魔王軍に敗れ死亡、 もしくは逃亡、 しまいには魔王軍は魔族すらも虐げ、 1部の人族のみを庇護し、 その、 ての者たちが、 世界を支配してしまったのです。 そして現在に至るという訳です。 本当に神として恥ずかしい限りです。 私達は手を尽くしたのですが、 このような結果になってしまいました。 ですが神である私達が、 この世界に生きる心清き者たちを見捨てる訳にはいきません。 ですが私達に出来ることは勇者を召喚し、 なるべく正しく導く事しか出来ないのです。 そして遂に、 今回の召喚で私は、 勇者を召喚できなくなるでしょう。 できたとしても、 能力も特にない、 一般人でしか召喚出来ないでしょう。 それはあまりに酷です。 だから貴方には申し訳ないのですが、 貴方が最後の希望なのです!」 イナンナは直樹の手を強く握った。 直樹 「そんな! 神様達の期待を裏切り、 そんなことをしただなんて! あまりにも酷すぎます! でででも、 僕にそんな大役が勤まるかどうか……。 」 イナンナ 「大丈夫です! 私の召喚の儀式で呼び出されたのです! 勇者の素質はある! はずです! とりあえずステータスを見て見ましょう! それではっきりするはずです! 」 直樹 「んー、 そうは言っても、 どうやって見るればいいのですか? 」 イナンナ 「ただ、 ステータス、こう言えばいいのです! そうすると目の前に表示されます。 貴方の持ってるスキルなども表示されますよ! 」 直樹 「なるほど! なんかゲームみたいで良いですね! えーとそれじゃあ、 ステータス! 」 直樹の前にステータスが表示された。 直樹 「なるほど、 これが僕のステータスかぁ。 んーでもなんか、 勇者にしては弱っちいような? 」 イナンナもステータスを覗き込む。 イナンナ 「こ、 これは! ほぼ一般人と同等のステータス……、 す、スキルは! ………一つだけ………、 あら? このスキル初めて見る……私の辞書にも載ってないスキルですね。 何なのかしら、 神の理解者、 どんなスキルなのかしら……。 」 直樹は申し訳なさそうに、 直樹 「申し訳ありません、 せっかく期待してくださっていたのに。 こんなヘボステータスで……ははは、 やっぱり僕には荷が重かったんですね……。 」 直樹は肩を落としていた。 イナンナ 「い、 いやいやこちらこそ申し訳ないです……。 私にもっと力が残されていたら……。 で、 でもできる限りの事は、 させていただきます! ですからそんな気を落とさないでください! 」 イナンナは直樹の肩に優しく触れた。 直樹 「ありがとうございます……。 できる限りの事は僕もしてみます! イナンナ様はお優しいですね! 流石女神様です! 」 イナンナ 「うふふ嬉しいです! そうですねとりあえず、 貴方には神界で私達神に、 色々鍛えてもらうと良いでしょう! 他の神達には私からお願いしておきます。 きっと神達からなら学べることは多いですし、 今よりずっと強くなれると思います! 」 直樹 「神様に修行をつけて貰うって事ですか? 大丈夫でしょうか、 ぼ、 僕なんかが………。 」 イナンナ 「うふふ貴方なら大丈夫でしょう! 何となく貴方のお人柄が見えてきました。 きっとみんな貴方を気に入りますよ! とりあえずまずは基礎を身につけて貰いたいので、 女神ネイトにお願いしようかしら……。彼女はすごく優しいので、 きっと貴方も気に入るでしょう! そうねそれがいいです! さぁ勇者直樹、 今からネイトの元に送ります。 しばらくお別れになりますが、 私は貴方を信じてます! 頑張って下さいね! 」 イナンナは直樹の手を力強く握りしめた。 直樹 「そう言って貰えて凄く嬉しいです! 期待に少しでも応えられるよう、 精進します! ありがとうございます! 」 イナンナは手をゆっくり離すと、 転送魔法を唱えた。 直樹の周りを、 神々しい光が取り囲む。 イナンナ 「さぁ勇者直樹よ、 暫くは厳しい修行が続くでしょう! ですがそれを乗り越えた先に、 貴方を生かす力が手に入るでしょう、 どうか気を強く! 成長した貴方を楽しみに待ってます! さぁ行きなさい! 」 直樹は眩い光とともに、 イナンナの元から消え去った。 そこには僅かな光の筋と、 寂しげに眺めるイナンナが残されただけだった。
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