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「……なぁ、朝晴、ちょっといいか?」  ある夜、二人はベッドに居た。しかし二人はまったりとしているが、何も着ていない。明らかに事後だということが分かる。  そこで話しかけたのは安東京助という男で、外見はかなりのイケメンである。職業は会社員だが、異性からの黄色い声を常に聞いているに違いないくらいにだ。実際に、異性に相当好かれているのだが。  そしてもう一人は桃井朝晴という男で、外見は普通だ。しかし職業はシステムエンジニアだが、まだ業績はそこそこしか上げられていない。異性からは、ただの「男性」だと思われているのだろう。  京助に話しかけられた朝晴は、ベッドの上でうつ伏せになってスマートフォンを見ていた。一方で京助は仰向けになって天井を見つめている。照明は今は点いていないので、それは穴が開く程に。代わりに、サイドチェストに常夜灯が弱く光っている。 「何だよ」  すると朝晴はスマートフォンでゲームをし始めていく。時間の経過によりゲームを進められるのか、素早く指をスワイプさせた。やるべき事がそれなりにあるらしく、口角を上げている。 「あのさ、ケツに紙を挟んだことあるか?」 「……は?」  スマートフォンから京助へと視線を移すが、相変わらず天井を見ている。そして京助を凝視するが、こちらへと視線を動かしてくれない。更に普通の会話かのように妙な発言をしているので、それについて聞きたいと思えた。スマートフォンの画面を暗くした後に、ベッドの上に投げた。  それでも、京助の様子は変わらない。 「今、何て言った?」  朝晴の表情が、次第に怪訝なものに変わっていく。  実は京助は先程のような発言、それに行動をすることがある。それは付き合い始めて暫くしてからだ。最初は緊張でもしているのか、場を和ませようとしているのか。そう思った朝晴だが、どうやら違うらしい。これが、京助の「素」の顔らしい。 「だから、ケツに紙を挟んだことはあるかって聞いてるんだよ」  そこでようやく、京助がこちらを見るが、やはりイケメンである。顔が整っていると思った朝晴だが、顔をぶんぶんと振った。  先程の思考を捨てると、すぐに返事をした。勿論、ノーと。 「あるわけないだろ」 「なん……だと……!?」  京助の顔は凍りついていた。まるで、この世のものではないものを見ているように思える。だが朝晴はそれに負けずに、言葉を足していく。 「あのさ、そんな機会ある? そもそも、京助はそういうことを、したことがある?」  身振り手振りでそう言うと、京助がガバリと起き上がった。そして再度こちらを見てから、暫くの沈黙の後に京助は答える。 「……無い」 「無いのかよ! どうして溜めたんだんだ!」  朝晴がそうツッコミを入れるが、京助は不貞腐れたように「寝る」と言う。なので朝晴は「はいはい寝ろ」と言った後に、スマートフォンを再び手に持った。  そしてゲームをした後に満足をすると、京助のように眠っていったのであった。
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