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目が覚めた和歌子は眩い光の中で起きた。
昨晩の雨が嘘のようだった。傍らには幹に脚を挟まれたまま、うつ伏せで眠っている良一がいた。
和歌子は良一の背中に降り積もった葉を払ってやった。
まだ、和歌子も良一も生きていた。生きて朝を迎えられたことが嬉しかった。
どこからか、バタバタという回転音を耳にした。
和歌子は咄嗟にヘリコプターの音だと気付いた。
「片桐さん、聞こえる?ヘリコプターだよ。わたしたちを探しに来たんだよ!」
和歌子は声を弾ませた。
上空には機影は見当たらないが、間違いなく飛んでいる。
和歌子は跳びあがり、両手を振りながら叫んだ。
「おーい!ここだよ!ここにいるよー!」
目を覚ました良一ははにかみながら言った。
「あんまり目の前で跳びあがらないで。パンツが丸見えだよ...」
「片桐さんだったら何百回見てもいいよ。だって、わたしの命の恩人だもの...」
やがて、雨上がりの空に一機のヘリコプターの機影が横切った。
(了)
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