3・希望の空

3/3
前へ
/9ページ
次へ
 目が覚めた和歌子は眩い光の中で起きた。  昨晩の雨が嘘のようだった。傍らには幹に脚を挟まれたまま、うつ伏せで眠っている良一がいた。  和歌子は良一の背中に降り積もった葉を払ってやった。  まだ、和歌子も良一も生きていた。生きて朝を迎えられたことが嬉しかった。  どこからか、バタバタという回転音を耳にした。  和歌子は咄嗟にヘリコプターの音だと気付いた。 「片桐さん、聞こえる?ヘリコプターだよ。わたしたちを探しに来たんだよ!」  和歌子は声を弾ませた。  上空には機影は見当たらないが、間違いなく飛んでいる。  和歌子は跳びあがり、両手を振りながら叫んだ。 「おーい!ここだよ!ここにいるよー!」  目を覚ました良一ははにかみながら言った。 「あんまり目の前で跳びあがらないで。パンツが丸見えだよ...」 「片桐さんだったら何百回見てもいいよ。だって、わたしの命の恩人だもの...」  やがて、雨上がりの空に一機のヘリコプターの機影が横切った。           (了)
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加