3・希望の空

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 和歌子は良一の傍らに駆け寄った。幹をどかそうにも、重すぎて動かせない。  雨が先ほどよりも激しくなってきた。雷は鳴りを潜めたが、和歌子は漆黒の樹海の中、声を限りに叫んだ。 「片桐さん!死なないで!絶対に生き延びて!」  良一は痛みに耐えながら、言った。 「バカだなあ...。俺たち...死ぬ予定だっただろう」 「ダメだよ。わたし、死ぬのやめた。いっしょに生き残って外に出よう!」 「君、本当は死ぬ気なんて、始めっからなかったんだろう?冷静に、考えたら...わかる。青酸カリなんて、入手できっこないし、本当に死ぬ気なら...俺なんて気にかけない...」 「そういう片桐さんだって、本当は死ぬ気なんかなかったんでしょう!わたし、わかったもん!」 「ハハハ。やっぱり、清水の舞台から落ちるつもりじゃないと...人は本気だとは...思われないみたいだ。こういう時に...使うんだよ」 「うん。わかった!だから、もう喋らないで!わたし、助けを呼んで来るから!」 「無理だよ。こんな樹海から外には出られない。そうだ...。君だけでも...外に出なさい。もしかすると、出られるかもしれない...」 「やっぱり、わたし、ここにいる」 「君はコロコロ、変わるねえ...」  どのくらいこうしていただろうか?  いつの間にか、良一も和歌子も眠ってしまった。  とっくに雨は上がっていた。  鳥の鳴き声があちらこちらで聞こえた。
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