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初デートじゃないもん!
「どうしてあなたのデートに僕が参加しなければいけないのでしょうか?」
「アニメではよくあることです」
圭はアニメの少年と違い、俺をどうしてやろうかな、という目線で見上げた。
俺は笑顔を頑張って崩さなかった。
誰かに褒めて欲しいぐらいに崩さなかった。
俺は圭君を大事にすると決めたのだ。
圭君こそお出掛けを東京に来てからしていないじゃないか、と。
「篤子さんは優しいから何も言わないと思いますけどね、デートに余計な参加者を入れるって、相手への侮辱になると思いますけど?」
七歳児は腕を組み、わかっているのか、という風に俺を言い聞かせに来た。
甘いな、七歳児。
大弥彦への連絡については、兄ではなく自分でしたから大丈夫なんだよ。
兄の提案した、苦らsick音楽を聴いて、の部分で俺はOUTだ。
よって、今日のお出掛けは俺の完全なる自主的行為に持ち込んだのだ。
つまり、大弥彦には、圭君を東京見物させたいから手助けしてほしい、と俺はお願いしたのであるからして、最初から大弥彦は俺とのお出掛けをデートとは認識していないはずである。
「甘いですね。普通はそう相手に言っておいてガードを緩めて呼び出し、実際はその東京見物させたいはずの生き物など存在しない、という、デート突入ではないのですか?」
「何それ! 君にそんな事を伝授した奴は何者だ!」
圭は鼻でふんっと笑った。
そして、「お」の口元を作った。
「待って! 兄さんだって言うのだけは止めて!」
「小野塚さんですよ。あの坊主頭の物凄い遊び人さんです」
「はああ。君はアンブな大人の方々と付き合うのやめようよ?」
「ですが、面白い玩具で遊ばせてくれますからね」
圭は斜め掛けしている黒いポシェットを片手で持ち上げて、これみよがしにプラッと揺らした。
黄色のポロシャツに赤系チェックの半ズボン姿という、イギリスのお坊ちゃまみたいな格好の圭が持つには不格好な本革製のそれには、圭が愛してやまない凄いエアガンが入っているのである。
いつか彼が銃刀法違反で警察に連れていかれるのでは! と、俺は胸がドキドキだ。
「では、大弥彦さんが来ましたら、僕は帰りますね」
「待ってよ! 一緒だって! 俺達三人で東京巡りって先輩は思っているって。彼女は物凄く優しい人だからね、君が帰ったら悲しむよ」
「そうですかね?」
「そうだって! 彼女は凄く優しいの! 先輩が帰っちゃうから君はここにいて!」
だよね、せんぱい!
「ま、待たせたな」
俺はカンガルーみたいに飛び上って、そのまま後ろ向きに着地した。
!!
「せんぱいが可愛い格好をしている!!」
「ば、ばか! 何を騒いでいるんだ!」
騒ぐなという方が無理だろう。
もっさり大弥彦先輩は、髪の毛をフワフワに下ろしていただけでなく、真っ白なボーラーレースの綿ワンピース姿、というものだったのだ。
黒ぶちメガネのもっさり感までも消し飛ぶという、凶悪的なほどに清楚さと可愛らしさが溢れていたのだ。
いや、ボーラーレース自体が、キリのようなもので穴をあけて製作するというやばいものなので、やばい大弥彦にぴったりなレースかもしれないが、甘すぎないレースは清楚華憐になるものだと俺こそかなり刺されていた。
「やばい! やばい! 眩しすぎる程に可愛い! ごめんなさい! ポロシャツにジーンズなんて代わり映えしない俺でごめんなさい!」
「騒ぐな! この馬鹿者が!」
俺は大弥彦に転がされるほどに突き飛ばされた。
きゃあ! と俺はよろめき、俺の目の前で大弥彦は真っ赤な顔をしながら圭に手を差し伸べた。
「では、行こうか? お前は東京は初めてだろ? 東京守護神の私がどこぞへでも案内してやるぞ?」
ツンツン圭は?
俺は優しい大弥彦に圭が酷い言葉を言ったらと少し心配になった。
なんだかんだ言っても、大弥彦は優しいのだ。
「では、金魚だらけの場所に行きたいです。父が行きたがっていた場所ですから、僕も見て見たくて。ああ、それから、僕は手を繋げません。いざという時に動けないと困りますから」
「おお! よし、今日はそこに行こう。それから、今日はお前は楽しむんだ。アンブはいないが、我が大弥彦のガードの目はそこかしこにあるぞ」
「では」
ああ! 圭は簡単に大弥彦の手を取った。
俺とは本気で嫌がって手を繋いでくれないのに!
憤った俺は勢いのまま二人の間につっこんだ。
そして、無理やりに圭と大弥彦の手を引き剥がし、俺は無理矢理に両手に花状態にして見せたのだ。
つまり、俺の右手は大弥彦の手を握り、俺の左手は嫌がる圭の右手を掴むという荒業である。
「お前は焼き餅焼きだな」
え?
大弥彦は顔を真っ赤に染めて顔を伏せている!!
俺は俺のボディガードを自称する七歳児を見下ろした。
圭君は七歳児とは思えない荒んだ顔付で、俺に向けて、ば~か、と口パクした。
え?
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