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七月。僕は今、薫蘭風お姉ちゃんの実家にいる。流石にもう慣れたけど。七月は薫蘭風お姉ちゃんの里帰りがあるのだけど、おばさんの伊織先生もちゃんと毎回呼ばれている。薫蘭風お姉ちゃんのお母さんが伊織先生の妹さんだからなのだけど……。
「姉さん……、とうとうこの一年で泣かした女の子、二千人越したわね?」
薫蘭風お姉ちゃんのお母さんの前で伊織先生が土下座している。
「ごめんなさい! 世の中可愛い女の子が多過ぎるからいけないんだ!」
伊織先生は女体化した僕をお嫁さんにしたいとか寝ぼけたこと言ってるけど、そうなったら絶対浮気で悩ませられるだろうなぁ。慰謝料はたんまり取れそうだけど。
「翡翠ーー、バーベキューはじめるぞーー。そんなくだらない伊織先生なんてほっとけーー」
「はーーい。瑠璃お兄ちゃん、今行くーー!」
薫蘭風お姉ちゃんのお母さんに足蹴にされる伊織先生を放っといて瑠璃お兄ちゃんの側に行く。将来の慰謝料より今のバーベキューだよね。
薫蘭風お姉ちゃんの実家はすごい山奥で里帰りのときはキャンプとバーベキューを毎回やる。伊織先生が妹さんからのお叱りを少しでも軽くしようとスタジオメンバー全員連れてくるから夏の慰安旅行みたいになってる。
「翡翠くん、イワナ焼けたよ」
五丁目さんが僕に焼き魚を渡してくれた。
「ところで今回は風くんと水くんは来なかったんだね。寂しくないかい?」
「フーフーとスイスイはお父さんの祖国に里帰りしてるから。でも、みんないるから寂しくないですよ」
「そうかぁ。風くん水くんの綺麗な金髪はお父さん譲りなんだね」
「翡翠くん、お肉も焼けてるよ。野菜もね。採れたてのとうもろこしも美味しいよ」
薫蘭風お姉ちゃんが紙皿にお肉とお野菜を載せて渡してくる。
「そうめんもあるぞーー」
げたんわお兄ちゃんは鍋の番。
「デザートはスイカにする? メロンにする?」
良お兄ちゃんもまだ食べ始めてもいない僕にデザートの選択を迫る。
「バーベキューと言ったら焼きマシュマロだろう!」
タッくんまで……。
「あはは。翡翠くん、大人気だねぇ」
「香多お兄ちゃんはやらないの?」
「ん〜、僕は誰かに食べさせるより、おじさまに食べさせてもらいたい」
ブレないなぁ。僕が言うのもなんだけど、お父さんのどこがいいんだろ? 確かに優しくて強いけど、ただのおじさんなんだけどなぁ。最初に出会った頃からこうらしいので、十年お父さんを推し続けている。瑠璃お兄ちゃんもお父さんがおじさまって呼ばれるの未だに違和感しかないって言ってた。
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