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「来年……、来年また増えていたら私は姉さんの実年齢バラすから!」
「それだけはやめてーー!」
伊織先生はまだ叱られている。永遠の二十四歳って言ってるけど、無理がある。大体薫蘭風お姉ちゃんのお母さんの年齢より上な訳だし。
情報をリークしているのは、アッキーとマッキーだ。二人とも伊織先生と暮らしているけど、雇い主、薫蘭風お姉ちゃんのお母さんだし。普通に伊織先生の監視が仕事だし。そのアッキーとマッキーは、黙々と知らん顔でバーベキュー食べてる。監視の目があっても女の子のナンパをやめられない伊織先生もある意味すごいけど。
今日はお父さん大人しいなとチラッと見たら薫蘭風お姉ちゃんのお父さんと一緒にお酒を飲んでいる。
「やっぱり日本に帰ってきたら日本酒飲みたくなるんだよねぇ」
「私で良かったらいくらでも相手をしますよ。薫蘭風ちゃんにはお世話になっていますからねぇ!」
薫蘭風お姉ちゃんのお父さんは海外に単身赴任しているのだけど、ここ数年は薫蘭風お姉ちゃんの里帰りに合わせて帰国している。多分、その原因は瑠璃お兄ちゃんだ。
「ふう。お腹いっぱい」
バーベキューもそうめんもフルーツもスイーツもお腹いっぱい食べて満足。
「翡翠くん、ちょっと散歩しようか?」
「うん!」
僕は薫蘭風お姉ちゃんに誘われて山道に入っていく。この辺の山は薫蘭風お姉ちゃんの実家の土地らしくて、他の人に会うこともない。伊織先生もお金持ちだけど、薫蘭風お姉ちゃんの実家も大分資産があるそうだ。
ちなみに瑠璃お兄ちゃんは薫蘭風お姉ちゃんのお父さんに捕まっている。伊織先生関係だから、にょたチョコ男子はみんな女体化してるけど、女の子の姿で絡まれるんだよね。大体なんの話をされるかも想像つくし。
「あ! クワガタ!」
「翡翠くんもやっぱり男の子だね。クワガタ好きなんだ!」
「だってカッコいいもん!」
薫蘭風お姉ちゃんと手を繋いで山道を歩いて橋を渡って、湧き水を飲む。
「ふう。やっぱりここのお水は美味しいねぇ」
「で、薫蘭風お姉ちゃん、僕にお話あるんでしょ?」
「あら。勘がいいね。やっぱり勉強得意なだけあるね」
「瑠璃お兄ちゃんのこと?」
「うん。そろそろプロポーズして欲しいなって。瑠璃くん、翡翠くんとなるべく一緒にいてあげたいって理由で翡翠くんにべったりじゃん?」
「そう言ってるね。ごめんなさいとしか言えないけど」
「でもね、それは建前なんだよ。本音でもあるけど。私は瑠璃くんちに嫁入りするのも構わないし、瑠璃くんが婿入りするのもどっちでもいいの。婿入りだったらおばさんと一緒に暮らすことになるけどね。私が嫁入りするんだったら瑠璃くんは翡翠くんとも一緒にいられる訳だから」
「え〜、じゃあ瑠璃お兄ちゃんがプロポーズしないのなんで?」
「瑠璃くんの優しさなんだけど、私の今の生活を崩すのが心配みたいでね。私はみんなのスケジュール管理のマネージャー的なお仕事してるけど、おばさんからカメラ習って賞もいくつか頂いてるんだよね。そういう夢に向かっている私を応援したいから、プロポーズに踏み切れないの」
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