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「詳しいんですね」と、その説明を一緒になって聞いていた幸守が言った。すると、彼の方に目を向けた嵯峨野は「工業系の高校だったからな」と答えた。
「へぇ。直さないんですか?」幸守が続けて聞く。
「直せるもん直したいよ。あの路地裏はレイプやら喧嘩やらが多いんだ。だから取り付けたってのに、一ヶ月も経たないうちに壊された。あれ、取り付けんのに結構すんだよ。自分で修理することも考えたけど、生憎そんな道具がないしな。もうしばらくはあのまんまかな」
嵯峨野はため息混じりに答えた。ビルの管理人も楽ではないらしい。どこもこの不景気の煽りを食らっているのだ。
「壊した相手に心当たりは?」左門寺が嵯峨野に問いかける。
「ないですね。壊された日の映像データ残ってて、パソコンで見たけど、この店の客でもなかったし」
「その映像、お借りできますか?」
「別にいいですけど、それって事件に関係あるんですか?」
それは菊村も、幸守も同意見であった。嵯峨野がそう尋ねてから、二人も同じようなことをそれぞれ左門寺に尋ねたのである。
「あるに決まってるじゃないですか」と、左門寺は答えた。彼の中では何やら確信があるらしい。他の三人は彼の言い分に耳を傾けた。
「その壊した人、もしくはその喧嘩の相手が犯人の可能性だってあるでしょ。事実、犯人はカメラの起動していないあの裏路地に被害者を放置したんですから」
「ということは、犯人はあのカメラが壊れていたのを知っていた可能性があるってことですか?」
菊村が改めて左門寺に問いかけると、「えぇ、そういうことです。捜査はひとつひとつ可能性を潰すことから始まるって、警部がよく言っていたことでしょう」とニヤリと笑って彼を見る左門寺が言った。
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