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「たしかに、そう言ったこともありますね」と納得した菊村は、続けて嵯峨野の方へ視線を向けて、「カメラの映像は?」と改めて聞いた。
「待っててください。今持ってきますから」
嵯峨野は少し面倒臭そうに言って、一度店を出た。そして彼はその映像のデータが入ったUSBメモリを持ってきて、「これです」と、菊村に手渡した。
「ありがとうございます」菊村はそれを受け取り言う。それをズボンのポケットに仕舞い、「さて、先生、他に聞きたいこととかはありますか?」と左門寺に尋ねた。
「いえ、僕の方からはもう何も。君はどうだい?幸守くん」左門寺は顎を指でなぞるようにしながら幸守に聞いた。
「いや、俺もないかな」
「それじゃあ戻りましょうか。あまり長居しても迷惑でしょうし」
菊村が言うと、左門寺は「えぇ、そうですね」と言った。
嵯峨野は、帰れ帰れ。と小さな声で言っていた。彼にとってこの三人は鬱陶しい以外に何もなかった。
店を出ると、幸守が他の二人に「案外協力的でしたね」と話しかけた。
「彼は恐らく犯人じゃないだろうね」左門寺が軽快にビルの階段を下りながら言った。その後を追いかけるようにして階段を下りる菊村が「それはどういうことですか?」と彼に問いかけた。
「アリバイがあるからですよ」と、左門寺は答えたが、そのアリバイを一瞬にして崩してみせた彼がそんなことを言っても説得力がない。幸守が「そのアリバイは、お前が崩しただろ」と反論したが、左門寺は、その推理には無理がある。と言った。
「なんだよ、無理って」幸守が尋ねる。
「簡単なことさ。“距離”だよ」左門寺がすぐに答えた。
「距離ですか?」
菊村が聞くと、左門寺が詳しく答え始める。
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