第十一話

1/6
前へ
/174ページ
次へ

第十一話

 二人は、映画館の中に入ると塩とキャラメルのハーフのポップコーンとお目当ての限定のエガオドリンクホルダーを手に入れて気分揚々に映画館の中に入り、そしてとある現実に気づいた。と、言うよりも何故気づかなかったのだろう?  席が隣同士と言うことに。  二人は限定ドリンクホルダーを手に入れた喜びなんて吹き飛ばして緊張に背筋を針金のように伸ばした。手に汗が溢れ、映画館の薄明かりでも分かるくらいに顔が真っ赤になる。  映画館の中はエガオが笑う時の劇中歌が流れ、観客の気持ちを高めようとしているが、二人の気持ちはまるで違う方向に高まっていっていた。 (どうしよう……) (どうしよう……)  二人は、同じように考え、同じように悩み、同じようにお互いをチラチラと見た。 「レ……レンレン君……」  オミオツケさんは、恐る恐る口を開く。 「は……はいっ」 「えっと……飲み物……コーヒーにしたんだ」  そう口にしてから"なんたる語彙力の無さ"と嘆く。どこのお見合いだ、と思わず自分に突っ込んでしまう。 「はっはい……」  しかし、レンレンも緊張していつものように朗らかに笑って返せない。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加