第十一話

3/6
前へ
/174ページ
次へ
 彼と自分はみそ汁だけの関係のはずなのに……。  オミオツケさんは、自問を繰り返しながらも答えは出ず、映画の本編がスタートした。  映画が始まった途端、オミオツケさんは自問していたことをすっかりと忘れた。  そのくらい映画は面白かった。  文字の中だけであったキャラクターが命を持って動き出し、世界観を浮き彫りにしながら進んでいく。ストーリーも繊細で小説だけでは、見えてこなかった部分がはっきりと伝わり、臨場感が増していく。  その中には原作にはないオリジナルのエピソードも交えられているが決してストーリーを壊すことなく、新たな刺激となって見る側を楽しませてくれた。  オミオツケさんは、興奮し、汗ばんだ手を握りしめる。  その手がぎゅっと握りしめられる。  オミオツケさんは、驚いて現実の世界に引き戻される。  オミオツケさんの手の上に大きな手が被さっていた。  レンレンの手だ。  レンレンは、目を大きく輝かせて映画を見ている。  スクリーンの中でキャラたちが立ち回るたびに小さな声を上げ、オミオツケさんの手に置いた手に力を入れる。  恐らく無意識だ。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加