第十一話

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 映画の世界に入り込んでオミオツケさんの手を握っていることに気づいてすらいない。  逆にオミオツケさんはレンレンの固く温かい手の感触を意識し過ぎて映画を見るどころではない。この間のみそ汁の特訓の時と違い、目は開いてるし、どかそうと思えばどかせる。なのに何故か心がそれをしようとしない。  むしろ……。  レンレンの目がこちらを向いた。  オミオツケさんの冷めた目から送られる視線にようやく現実に戻ってくる。  そして自分の手がオミオツケさんの手を握ってることに気づき、驚いて声をあげそうになるのを、オミオツケさんが慌てて逆の手でレンレンは口を押さえる。  オミオツケさんの手の感覚が唇に触れ、レンレンの頬が赤くなる。  オミオツケさんの冷めた目が熱に浮かされる。  その時だ。  周りの観客たちから小さな悲鳴が上がる。  オミオツケさんとレンレンの目がスクリーンに向く。  主人公であるエガオと彼女の想い人であるカゲロウの向かい合った二人の顔が大きなスクリーンに映し出されている。  カゲロウは、キョトンっとした顔で、エガオは整いすぎるくらい整った顔を赤く染めて。 (えっ?何このシーン?)
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