第十二話

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 しかし、その答えは出ないままにレンレンは、足を止める。  オミオツケさんは、彼にぶつかりそうになるも寸前で止まる。 「……着きましたよ」 「えっ?」  レンレンの言葉にオミオツケさんは前を向いて、冷めた目を大きく見開き、輝かさせる。  エガオの笑う時の世界がそこにはあった。  白いドールハウスのように左右に割れるように開いた箱型のキッチンは小説に登場するカゲロウのお店、キッチン馬車だ。  いつの間にかフードコートのコラボカフェまで歩いてきていた。  オミオツケさんは、驚きつつもカフェの中を見回す。  キッチン馬車の前方にはカゲロウの相棒である六本脚の黒馬、スレイプニルのスーちゃんの等身大フィギュアが設置されている。テーブルも様々な色のパラソルを差した白い丸テーブルが置かれ、完全にキッチン馬車が再現されていた。  壁にはエガオを始めとした主要キャラクターのパネルが飾られ、本当に小説の世界に入り込んだような既視感を感じさせ、店員もホールを回る女の子達はエガオの鎧の形をしたエプロンをし、キッチンで働く人達はカゲロウの鳥の巣のような髪をした帽子を被っている。
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