第十二話

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 その声にオミオツケさんも自分が無意識できつい口調で言っていたことに気づく。 「ごめんなさい……別に嫌とじゃなくて……」  オミオツケさんは、顔を伏せてスカートをギュッと握る。 「あまり……子ども扱いしないで欲しいな……と」 「いや……ごめんなさい……そう言うつもりではなく……その……」  レンレンは、何かを言おうとするも言葉がうまく紡げない。  レンレンのそんな姿を見てオミオツケさんは気づく。  レンレンも動揺してるのだ。  映画館の中での行為に。  だから、オミオツケさんがどう思ってるのか、何を感じてるのかを知りたくて手探りで言葉を選んでるのだ。 (私……馬鹿だ)  オミオツケさんは、スカートを握る手を強める。  しかし、そう分かっても何を言ったらいいのか、どんな態度をしたらいいのか、まるで分からなかった。  レンレンは、表情を固くし、オミオツケさんは怒られた犬のように顔を伏せたまま沈黙だけが流れた。  そんな重い空気を破るよう明るい声が飛んでくる。 「お待たせしましたぁ!」  エガオの格好をした店員が元気な声と笑顔で注文した 料理を運んでくる。
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