第十二話

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 明るくてとても好感が持てる女の子で、年もエガオと同じくらいだろう。  しかし、オミオツケさんは少しむかっとした。  エガオは、もっと慎ましくて恥ずかしがり屋。そして育ってきた環境のせいで笑うことが出来ない。  コラボカフェならコンセプトを守って欲しいと思ったが店員はそんなこと気にせずに二人の前に料理を置く。  レンレンにはナポリタンとアップルティー。  オミオツケさんにはフレンチトーストとアップルティー、そして……。 「これは?」  オミオツケさんは、フレンチトーストの隣に置かれた蓋のされたカップを指差す。 「オニオンスープです」  店員は、にこっと笑って答える。  だから、笑うな!と胸中で怒鳴る。  しかし、店員はそんなオミオツケさんの心なんて知らずに笑顔をやめない。 「当店オリジナルのフレンチトーストのセットです。美味しいですよ」  それはオリジナルとは言わない、改悪だとオミオツケさんは思った。  もし、オリジナルを謳うのなら余計なものは入れずにフレンチトースト一択にすべき。  しかし、店員はそんなオミオツケさんの思いになんて気づくこともなく、頭を下げてキッチン馬車まで戻っていく。
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