第十二話

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 オミオツケさんは、夢中でナイフを使い、フォークで口に運ぶ。心はもうエガオになり切っていた。  そして最後の一口を口に運ぼうとして、止める。  ナポリタンを食べ終えたレンレンがアップルティーを観察するように見つめながらチビチビと飲んでるのを見たからだ。  オミオツケさんは、フォークとナイフを置き、眉を顰めてレンレンを見る。 「……どうしたの?」  オミオツケさんの不安そうな声にレンレンは驚いたように目を開ける。 「美味しく……ないの?」  その言葉にレンレンは大きく首を横に振る。 「そんなことないです。美味しいです!見事な再現ってくらい」  レンレンの言葉にオミオツケさんは首を傾げながら自分のアップルティーに口をつける。  美味しい。  小説にあるリンゴをそのまま齧ったような味そのものだ。 「いや……あんまりに美味しいからレンレン定食で使えないかなって。これならアレルギー関係なく喜ばれるし」  そう言って照れくさそうに頬を掻く。  レンレン定食。  彼が高校の食堂を使って事情があって食べれない生徒に提供する料理。  オミオツケさんは、アップルティーをテーブルに戻す。 「ねえ、レンレン君」
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