第十三話

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「そろそろ……出ないといけないかも……です」 「えっ?」  オミオツケさんは、顔を上げてカフェの入り口を見て、驚く。  入り口の外にはいつの間にか長蛇の列が出来ており、全員が全員、興奮気味に今か今かと入るのを楽しみにしていた。  カフェの中もいつの間にか満員御礼で、何故かこちらをヤキモキした顔で見ている人たちがいた。 「そろそろ出ないとお店に迷惑ですね」 「そうだね」  オミオツケさんは、少しホッとしたようながっかりしたように言う。 「オニオンスープ、まだ残ってますよ」  レンレンは、蓋のされたままのスープを指差す。  オミオツケさんもその存在を忘れていて「あっ」と口にする。フレンチトーストのあまりの美味しさと胸に沸いた感情に乱されて忘れていた。 「残しますか?」 「ううんっ。飲むよ。せっかく作ってくれたんだもん」  そう言ってオミオツケさんは、すっかり冷めたスープの器を持ち、蓋を開ける。  そして驚愕する。  スープの器の中に入ってたもの。  それはオミオツケさんが知っているオニオンスープではなく、ワカメと豆腐の泳いだ鮮やかな茶色のみそ汁であった。  オミオツケさんは、息を飲む。
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