第十三話

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 なんでオニオンスープがみそ汁に⁉︎  店員が間違えたのか⁉︎  そんな考えが逡巡するももはやどうでもいいことだ。  もう、オミオツケさんの意識は目の前にあるものをみそ汁と認識してしまったのだから。  みそ汁の表面が沸騰するように泡吹き始める。  オミオツケさんの表情が青ざめる。  レンレンもオミオツケさんの異変に気付く。  みそ汁は、器の中で螺旋を描きながら激しく回転し、旋風のように浮かび上がる。  オミオツケさんは、思わず器を落とす。  その音に客と店員達が振り返り、オミオツケさんの前にみそ汁の旋風に驚きの声を上げる。  まずい!  レンレンは、慌ててたちあがる。  みそ汁は、ゆっくりと形を変えていく。  ワカメと豆腐が左右に綺麗に分かれ、汁が半分に分裂する。  豆腐の方は華奢な女性の姿へと形を変え、豆腐が鎧のように各所に浮かび上がる。  ワカメの方は背の高い男性。髪が盛り上がって鳥の巣のような髪型になる。  エガオとカゲロウだ。  オミオツケさんは、震える目を大きく開く。  みそ汁のエガオとカゲロウはお互いで見つめ合うとゆっくりと近寄り、そしてそのままお互いの口と口を合わせた。
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